新段階の情報化社会における私法上の権利保護のあり方

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 17H00961
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 潮見 佳男 京都大学, 法学研究科, 教授 (70178854)
• 研究分担者: 橋本 佳幸 京都大学, 法学研究科, 教授 (00273425) ; 村田 健介 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (00551459) ; コツィオール ガブリエーレ 京都大学, 法学研究科, 教授 (10725302) ; 西谷 祐子 京都大学, 法学研究科, 教授 (30301047) ; 愛知 靖之 京都大学, 法学研究科, 教授 (40362553) ; 木村 敦子 京都大学, 法学研究科, 教授 (50437183) ; カライスコス アントニオス 京都大学, 法学研究科, 准教授 (60453982) ; 品田 智史 大阪大学, 高等司法研究科, 准教授 (60542107) ; 長野 史寛 京都大学, 法学研究科, 教授 (60551463) ; 吉政 知広 京都大学, 法学研究科, 教授 (70378511) ; 須田 守 京都大学, 法学研究科, 准教授 (70757567) ; 山本 敬三 京都大学, 法学研究科, 教授 (80191401) ; 横山 美夏 京都大学, 法学研究科, 教授 (80200921) ; 和田 勝行 京都大学, 法学研究科, 准教授 (90551490)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 民法 / 民事責任 / 情報法 / 契約規制

研究実績の概要

研究期間の最終年度である令和３年度は、全体研究会の開催及び共同研究者各自による研究を通じて、展開応用に取り組んだ。
第１に、個人情報の収集・利活用に関する私法的規律との関連では、プライバシー権につき、自己情報コントロール権から適正な個人情報の取扱いを受ける権利への再構成を図る新理論を通じて、本人同意からプロセスの適正さへの転換という方向性が全体研究会において獲得された。個別研究では、この応用として、デジタルプラットフォームでの個人情報の適正な取扱いが検討された。
第２に、AIの投入に対応した責任原理との関連では、全体研究会において、技術開発を進める企業の主体的役割を重視する法政策学的提案を受けて、そこで提唱される無過失責任と危険責任の考え方とが対照されたほか、個別研究では金融サービスへのAIの投入場面が取り上げられた。また、ネットワーク化に関係する派生的な個別研究として、オンライン取引システムにおける責任リスクの分配や口座の担保化の問題にも取り組んだ。
第３に、救済法理の再編成との関連では、全体研究会において、差止請求という救済手段につき、その本質的機能を踏まえて、インターネット上の情報媒介者に対する削除請求等、関与者複数の場面への応用が図られた。また、差止めの根拠となる権利法益に関して、不実情報の流通に対する信用の保護要件をめぐる研究も進めた。さらに、個別研究では、利得吐き出しの方法による救済に関して、侵害利得の構成による利益の一部返還が考察された。
このほか、研究手法の面では、民事立法形式や技術領域の規制手法に関する法政策学的な基礎研究が進展した。また、外国の法状況の調査・分析に関しては、国際集会の開催はかなわなったが、改正民法の翻訳・注釈の刊行や国際研究会でのオンライン報告を通じて、ドイツ語圏・英語圏に対する国際的な研究発信を実現することができた。

現在までの達成度 (段落)

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

令和3年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] ゲートキーピングとしての評価・等級付け (2022)
  • 著者名/発表者名: 須田守
  • 雑誌名: 法律時報 巻: 94（3） ページ: 39-45
• [雑誌論文] 「国際取引における企業の社会的責任――『ビジネスと人権』をめぐって――」 (2022)
  • 著者名/発表者名: 西谷祐子
  • 雑誌名: 国際商取引学会年報 巻: 23 ページ: －
• [雑誌論文] 交通事故被害者の後遺障害による逸失利益についての定期金賠償 (2021)
  • 著者名/発表者名: 橋本佳幸
  • 雑誌名: 私法判例リマークス 巻: 63 ページ: 38-41
• [雑誌論文] 〔海外判例研究〕タクシー利用者とタクシー運転手をつなぐスマートフォン・アプリは、情報社会サービスの域を超えた運輸サービスを提供するものであるとはいえない (2021)
  • 著者名/発表者名: カライスコス アントニオス
  • 雑誌名: 判例時報 巻: 2476 ページ: 156-157
• [雑誌論文] 私人の情報提供と行政判断（上） (2021)
  • 著者名/発表者名: 須田守
  • 雑誌名: 法律時報 巻: 93（6） ページ: 131-137
• [雑誌論文] 私人の情報提供と行政判断（下） (2021)
  • 著者名/発表者名: 須田守
  • 雑誌名: 法律時報 巻: 93（7） ページ: 104-109
• [雑誌論文] 不利益処分の理由提示 (2021)
  • 著者名/発表者名: 須田守
  • 雑誌名: 行政法研究 巻: 40 ページ: 53-63
• [雑誌論文] インターネットバンキングによる不正送金と銀行の責任―東京高判平成29.3.2 (2021)
  • 著者名/発表者名: 長野史寛
  • 雑誌名: 金融法務事情 巻: 2170 ページ: 72-82
• [雑誌論文] いわゆる『利益吐出し』と民法法理―侵害利得の可能性と限界を中心に (2021)
  • 著者名/発表者名: 長野史寛
  • 雑誌名: 民商法雑誌 巻: 157(1) ページ: 88-115
  • 査読あり
• [雑誌論文] 忘れられる権利 : フランス (2021)
  • 著者名/発表者名: 村田健介
  • 雑誌名: 法学教室 巻: 490 ページ: 4-7
• [雑誌論文] インターネット上の名誉毀損と民法法理 (2021)
  • 著者名/発表者名: 村田健介
  • 雑誌名: 法学セミナー 巻: 66（12） ページ: 32-38
• [雑誌論文] 独占的ライセンスと差止請求権 (2021)
  • 著者名/発表者名: 栗田昌裕
  • 雑誌名: ジュリスト 巻: 1565 ページ: 40-46
• [雑誌論文] デジタルコンテンツの流通と消尽原則──EU法及びドイツ法を中心とした考察 (2021)
  • 著者名/発表者名: 栗田昌裕
  • 雑誌名: 情報通信政策研究 巻: 5(1) ページ: 49-76
• [雑誌論文] 短文投稿サイト『Twitter』を管理運営する者に対する投稿記事の削除請求が棄却された事例──ツイッター投稿記事事件 (2021)
  • 著者名/発表者名: 栗田昌裕
  • 雑誌名: 判例評論 巻: 751 ページ: 18-23
• [雑誌論文] デジタルプラットフォームと個人情報の保護 (2021)
  • 著者名/発表者名: 栗田昌裕
  • 雑誌名: 消費者法 巻: 13 ページ: 18-23
• [学会発表] AIの権利主体性－フランス法の議論 (2022)
  • 著者名/発表者名: 村田健介
  • 学会等名: 名古屋大学民事判例研究会
• [学会発表] 債権法改正セミナー 請負契約関係 (2021)
  • 著者名/発表者名: 吉政知広
  • 学会等名: 司法研修所 教官セミナー
  • 招待講演
• [学会発表] コロナ禍の契約関係への影響 (2021)
  • 著者名/発表者名: 吉政知広
  • 学会等名: 京都大学大学院法学研究科法政策共同研究センター設立記念シンポジウム「自由の保障と公共の役割――コロナ禍が突き付けた課題」
• [学会発表] 日本における人工知能と金融サービス：消費者保護の課題を中心として（Artificial Intelligence and Financial Services in Japan: Focusing on Consumer Protection Issues） (2021)
  • 著者名/発表者名: カライスコス アントニオス
  • 学会等名: チェコ共和国財務省主催・国際会議「金融サービスにおける人工知能」
  • 招待講演
• [学会発表] 普通預金の担保化に関する検討課題 (2021)
  • 著者名/発表者名: 和田勝行
  • 学会等名: 日本私法学会
• [学会発表] 国際取引における企業の社会的責任――「ビジネスと人権」をめぐって―― (2021)
  • 著者名/発表者名: 西谷祐子
  • 学会等名: 国際商取引学会
• [学会発表] Business and Human Rights (2021)
  • 著者名/発表者名: Yuko Nishitani
  • 学会等名: アジア国際法アカデミー（香港）シンポジウム「Trends in Commercial Arbitration and Private International Law」
  • 国際学会 / 招待講演
• [図書] 消費者法の作り方 (2022)
  • 著者名/発表者名: 丸山 絵美子編著（吉政知広）
  • 総ページ数: 256（43-65）
  • 出版者: 日本評論社
  • ISBN: 978-4-535-52635-8
• [図書] 新注釈民法(8) 債権(1) (2022)
  • 著者名/発表者名: 磯村 保、大村 敦志、道垣内 弘人、山本 敬三編著（吉政知広）
  • 総ページ数: 862（368-429）
  • 出版者: 有斐閣
  • ISBN: 978-4-641-01768-9
• [図書] 基本講義 債権各論I 契約法・事務管理・不当利得 第4版 (2022)
  • 著者名/発表者名: 潮見 佳男
  • 総ページ数: 432
  • 出版者: 新世社
  • ISBN: 978-4-88384-344-2
• [図書] 民法（全）〔第3版〕 (2022)
  • 著者名/発表者名: 潮見 佳男
  • 総ページ数: 782
  • 出版者: 有斐閣
  • ISBN: 978-4-641-13885-8
• [図書] 刑事法学の系譜 (2022)
  • 著者名/発表者名: 浅田 和茂、井田 良、白取 祐司、長井 圓、丸山 雅夫、吉田 敏雄編著（品田智史）
  • 総ページ数: 912（703-730）
  • 出版者: 信山社出版
  • ISBN: 9784797281255
• [図書] 知的財産法制と憲法的価値 (2022)
  • 著者名/発表者名: 高倉 成男、木下 昌彦、金子 敏哉編（栗田昌裕）
  • 総ページ数: 372（123-151）
  • 出版者: 有斐閣
  • ISBN: 978-4-641-24349-1
• [図書] 商標法コンメンタール 新版 (2022)
  • 著者名/発表者名: 金井 重彦、鈴木 將文、松嶋 隆弘編著（栗田昌裕）
  • 総ページ数: 1280（697-726）
  • 出版者: 勁草書房
  • ISBN: 978-4-326-40402-5
• [図書] 民法学の継承と展開 (2021)
  • 著者名/発表者名: 岡本 裕樹、沖野 眞已、鳥山 泰志、山野目 章夫（山本敬三）
  • 総ページ数: 990（849-876）
  • 出版者: 有斐閣
  • ISBN: 978-4-641-13861-2
• [図書] Das reformierte japanische Schuldrechtー Erlaeuterungen und Text (2021)
  • 著者名/発表者名: Keizo Yamamoto / Gabriele Koziol (Hrsg.)
  • 総ページ数: 312
  • 出版者: Mohr Siebeck
  • ISBN: 978-3-16-161142-1
• [図書] 基本講義 債権各論II 不法行為法 第4版 (2021)
  • 著者名/発表者名: 潮見 佳男
  • 総ページ数: 288
  • 出版者: 新世社
  • ISBN: 978-4-88384-336-7
• [図書] 新契約各論Ⅱ (2021)
  • 著者名/発表者名: 潮見 佳男
  • 総ページ数: 532
  • 出版者: 信山社出版
  • ISBN: 978-4-7972-8025-8
• [図書] 担保法の現代的課題――新たな担保法制の構想に向けて (2021)
  • 著者名/発表者名: 田髙 寛貴編著（和田勝行）
  • 総ページ数: 288（48-72）
  • 出版者: 商事法務
  • ISBN: 978-4-7857-2902-8
• [図書] 倒産と担保・保証〔第2版〕 (2021)
  • 著者名/発表者名: 「倒産と担保・保証」実務研究会（和田勝行）
  • 総ページ数: 896（583-609）
  • 出版者: 商事法務
  • ISBN: 978-4-7857-2896-0
• [図書] 知財のフロンティア 第1巻 (2021)
  • 著者名/発表者名: 田村 善之、山根 崇邦編著（栗田昌裕）
  • 総ページ数: 368（191-214）
  • 出版者: 勁草書房
  • ISBN: 978-4-326-40397-4