研究課題/領域番号 |
17H00964
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
村山 眞維 明治大学, 法学部, 専任教授 (30157804)
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研究分担者 |
太田 勝造 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40152136)
D・H Foote 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10323619)
杉野 勇 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (80291996)
飯 考行 専修大学, 法学部, 教授 (40367016)
石田 京子 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 准教授 (10453987)
森 大輔 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40436499)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 法曹論 / 職域多様化 / 法曹倫理 / 階層分化 / 弁護士イメージ |
研究実績の概要 |
平成30年度前半は、小規模ないし中規模の法律事務所に勤務する経験を積んだ経営者弁護士、企業法務を主とする大規模法律事務所に勤務する経営者弁護士と勤務弁護士、官庁に勤務している比較的若手の弁護士など、多様な分野のシニア、ジュニアの弁護士にインタヴューを行い、法律業務の変化や弁護士のキャリア・パターンの変化についての情報を収集した。これは、年度後半に予定していた弁護士サーベイの質問項目を立てるためである。夏から秋にかけて質問項目を確定し、質問票の作成作業を秋に行った。弁護士登録者のこれまでのキャリアを調査するためのサーベイ「弁護士の職域多様化についての全国調査」を秋から冬にかけて実施した。11月9日に第1回目の調査票を郵送、その後、督促状の発送、2回目の調査票の発送を経て、12月31日までで郵送による回答を締め切った。この調査ではWebによる回答方法も採用し、こちらのサイトは1月末で閉鎖した。サンプルは3500人を日弁連登録弁護士から無作為に抽出した。最終回収総数は1478人、回収率は42.2%という高い値を得ることができた。回収率をどのように高めるかについて、上記のインタヴューでも弁護士からの意見を聞き、何度も検討を重ねた成果である。2月と3月にデータクリーニングを行い、単純集計レベルのデータについての検討を行なったが、回答者の平均年齢が47歳で、26歳から96歳まで回答者の年齢は広範にわたっており、弁護士のこれまでのキャリアについてのデータを得ることを目的としたサーベイとして良い結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に実施する研究の中心は、わが国の弁護士がこれまでどのようなキャリアを経てきているかについて全国的なパネル・データを得ることであった。これまでに実施されてきた弁護士を対象とする調査は年々回収率を下げてきており、弁護士全体の状況を知るためにどれだけ回収率の高い調査を実施することができるかが、我々にとって最大の課題であった。このため上に述べたように様々な分野で勤務している弁護士から意見を聞く他、社会調査における最近の動向も検討し、回答を郵便で返送してもらうという方法に加え、スマートフォンやパソコンからWebサイトにアクセスしてもらい、そこで回答するという方法も採用することとした。また、これまでのキャリアを追うために職場の移動を7回まで追うことにしたが、その結果、調査票自体は相当に厚さのあるものになる可能性が高かったため、質問項目を減らすこととオープン・クエスチョンを極力無くすよう努力した。こうした結果として、42.2%という高い回収率を得ることができた。これは1980年に日本弁護士連合会が実施した全国調査に並ぶ回収率である。 調査におけるもう一つの課題は、調査の目的が弁護士のこれまでのキャリアについてパネル・データを得ることにあるため、弁護士の年齢層に応じて満遍なく回答が得られるかどうかであった。これまでに最初の段階のデータの検討を行ったが、回答者の平均年齢は47歳、最年少の26歳から最高齢の96歳まで、回答者の年齢、司法修習期、弁護士登録年は広範に及んでいるだけでなく、それぞれの時期に対応しただけの数の回答を得ることができていることがわかった。これからさらに分析を進めていくが、この全国サーベイによって当初の目的に沿ったデータを得ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の最初の作業として、調査結果の速報版を作成している。これは、回答者の中の希望者に、調査結果の初期の集計結果を知らせるためである。今年度の主な作業は二つあり、一つは「弁護士の職域多様化についての全国調査」のデータ分析である。現在、単純集計からクロス集計に進む初期の分析を行っており、夏から秋にかけて、より高度なデータ分析を行っていく予定である。また、データ分析の進捗に合わせ、調査結果を公開していく作業も進める。年度末までにはデータの全容を示す分析結果を取りまとめ、学術雑誌に論文として発表する準備を終えたい。これは、日本語と英語の双方で論文としてまとめる予定である。高度な分析結果については、それぞれのテーマに応じて、学術雑誌に来年度以降発表していきたい。また、最初の段階の調査結果については、今年6月に開催される国際法社会学会で報告する予定である。さらに来年の国内、国外の学会においてさらに分析結果を報告していく予定である。 本年度のもう一つの主な作業は、弁護士の懲戒処分の塁年変化を追うことである。近年、弁護士に対する懲戒処分の増加が言われるが、懲戒処分制度の変化もあり、懲戒対象となっている弁護士の倫理違反の内実にも変化がある可能性が高い。その点も含め、過去からこれまでの変化を追う作業を行う。 次年度には、国民を対象とし、最近の弁護士業務における広告を含む依頼者獲得方法の変化が国民の弁護士イメージを変化させているかどうか、変化させているとすればどのようにかを明らかにするための全国サーベイを実施する予定である。そのための準備を出来るだけ早く始めたい。 最終年度には、弁護士キャリアのデータと国民調査のデータを付き合わせ、弁護士と国民との間の関係が、職業集団としての弁護士層内部の変化に伴いどのように変化してきたかについて検討を行う。国際的な比較のためのシンポジウムも開催したい。
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備考 |
フット ダニエル「組織内法曹の業務の在り方:概要」民事紛争処理研究基金報、33号(2018年)9-11頁。 石田京子(高中正彦・市川充共著)「座談会・弁護士のプロフェッション性をめぐって」ジュリスト1527号(2019年)72-84頁。 石田京子「国際的視点で考える弁護士倫理の課題~守秘義務と利益相反を中心に」大阪弁護士会倫理研修、2018年10月22日。
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