研究課題/領域番号 |
17H00964
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
村山 眞維 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (30157804)
|
研究分担者 |
太田 勝造 明治大学, 法学部, 専任教授 (40152136)
D・H Foote 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (10323619)
杉野 勇 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (80291996)
飯 考行 専修大学, 法学部, 教授 (40367016)
石田 京子 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 准教授 (10453987)
森 大輔 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40436499)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 法曹論 / 職域多様化 / 階層分化 / 弁護士イメージ / 弁護士利用 |
研究実績の概要 |
1990年代後半から始まった法専門職の内部分化は、2000年以降、特に2010年代に入り急速に進展し、企業・金融法務の中核には5つの大規模法律事務所が形成され、企業内弁護士も集団として形成されてきた。また、法律業務をビジネス・インダストリーと捉え(潜在的)一般個人依頼者に積極的に広告を行う大規模法律事務所やブティク型法律事務所も出現してきた。こうした内部分化は、これまで社会的エリートとして階層化が顕著ではなかった弁護士間において職務認識の分化をもたらし、プリンシパル・エージェント関係が内在する法律業務のあり方に深い影響を及ぼす可能性がある。本研究は、法専門職のこうした階層分化の進展が法曹倫理に支えられた対依頼者関係に、そしてひいては国民の弁護士利用可能性にいかなる影響を及ぼすかを、弁護士と一般国民との双方の調査を通して明らかにするものである。 2019年度には、前年度に行われた全国調査から得られたデータについて分析を進めた。この調査によって、戦後の初期に法曹資格を得た弁護士から直近に法曹資格を得た弁護士まで、幅の広いデータが得られている。修習期毎に分けて、弁護士のキャリアとその条件がどのように変化してきたかについて基本的な分析をした論文を日弁連法務研究財団のホームページに掲載し、一般に公開している(後掲「備考」参照)。また、6月に開催された国際法社会学会において研究報告も行った。さらに、弁護士の職務移動の経年変化や、弁護士年収変化のマルチレベル分析、企業内弁護士の満足度、弁護士キャリアのジェンダー分析、出身大学・法科大学院のキャリアへのインパクトなど、多様な観点からの分析を行っている。これらは2020年度にまとめて刊行する予定である。また、日弁連が公表している懲戒処分事案についてのデータ収集を行った。これは今年度に実施予定の調査による知見と関連させて検討していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度に実施した弁護士キャリア調査は順調に終了し、2019年度にはまずそのデータの徹底したクリーニングを行った。その後、司法修習期毎に弁護士の職務移動の状況および職務条件の変化などを追う基本的な分析を行い、さらに研究分担者がそれぞれにテーマについてさらに掘り下げたデータ分析を行った。このように最初の全国調査の結果の分析は順調に進んでいる。 また、弁護士キャリア調査のデータに基づく研究成果の公開については、2019年6月に国際法社会学会において研究報告を行い、2020年3月から日弁連法務研究財団のホームページで基本的分析結果を公開している。個別テーマについてのさらに掘り下げた分析結果は、現在複数の論文にまとめている。このように研究成果の発表・公開も、またその準備も順調に進んでいる。 今年度は、さらに、日本弁護士連合会が公表している懲戒処分を過去に遡って収集した。このデータは2020年度に実施予定の全国調査と関連させて研究に用いる予定である。 本研究プロジェクトは原則として月に1回研究会を開催し、研究を進めている。COVID-19の影響により3月の研究会はオンラインで行ったが、それによる問題は特に出ていない。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度には、まず、弁護士キャリアの変化についての研究論文をまとめ、日本法社会学会で報告する。当初の予定では開催は5月に予定されるはずであったが、新コロナウィルス対策のため、我々が研究報告を予定していたミニシンポジウムは7月か8月にオンラインで開催されることになった。このため、学会報告の時期が数か月遅れるが、それ以外は特に変更はない。 2020年度の主な作業は、日本国民を母集団とする弁護士イメージと弁護士依頼意欲についての全国調査を行うことである。この調査では、潜在的弁護士利用者である一般国民の間での弁護士業務についてのイメージがどのようなものであるかを、また、その弁護士業務についての認識がどのような条件の下で変化するかを、実験計画法を用いた質問票調査によって明らかにする。この全国調査においては、(1)国民の間の弁護士業務についてのイメージはどのようなものか、(2)弁護士業務に内在するPA関係はどの程度、どのように認識されているか、(3)弁護士への不安および回避傾向はPA関係の存在とどのように関連しているか、(4)弁護士への不安や距離感は積極的な広告によってどのくらい減少しうるか、(5)法曹倫理の存在についての認識は、弁護士への不安や距離感とどのように相関しているか、(6)法曹倫理違反についての情報は、弁護士業務への認識や不安、距離感をどのように変化させる可能性があるか、等々についてデータを収集する。 2021年度には、国民に対する質問票調査の結果を取りまとめると共に、弁護士に対する全国調査の知見との総合的な検討を行う。この研究結果を論文にまとめ、学会において研究報告を行う。また、研究論文を海外の学術雑誌に投稿する。さらに、わが国の法専門職の構造変化とそのインパクトについて国際的な観点から検討するために、国際シンポジウムを開催する。
|
備考 |
村山眞維、太田勝造、ダニエル・フット、杉野勇、飯考行、石田京子、森大輔「弁護士のキャリアはどう変わってきたか - 弁護士職域多様化調査からの報告」日弁連法務研究財団ホームページに掲載。https://www.jlf.or.jp/work/pdf/kenkyu-no135_houkoku.pdf
|