研究課題/領域番号 |
17H00973
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
多湖 淳 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80457035)
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研究分担者 |
稲増 一憲 関西学院大学, 社会学部, 教授 (10582041)
小浜 祥子 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (90595670)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 見えない危機 / 内容分析 / 実験 / 民意 / エリート |
研究実績の概要 |
国際紛争の初期段階における政府発表とメディア報道の実証研究を通して、必ずしも十分な研究が蓄積されてこなかった「言葉によるエスカレーション」の理論を構築してきた。①戦闘機のスクランブル、艦船による領海侵犯といった国際紛争の初期段階をとりあげ、そこにおける政府発表と国際メディア報道の比較研究を内容分析(量的テキスト分析:QTA)で実施し、これらをデータセットとして公開すべく準備を進めてきた。また、②自国や他国の国民が当該情報を受け取った上でどのような反応をするのかを実験手法で検討してきた。政府の情報発信の内容や報道のされ方で国民が敵対的な政策を支持するのか、逆に事件の沈静化を望むのかを把握することができてきた。 特に、令和2年度は、同元年度に実施した実験のデータ分析を行った上で、その継続的な追試実験を複数計画、実施した。「エリート成り切り」実験について良好な結果が得られたことを踏まえ、その継続が有力候補であったが、見えない危機のバリエーションが現実で増えていることを踏まえ、新規応用実験も一部で実施した。 論文は英語で作成し、学術誌への投稿を行っており、現在査読審査過程にある。また、Oxford Handbook of Foreign Policy Analysis(近刊)に原稿が採用されるなど、成果ががあっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
査読誌の掲載決定はまだないが、3本の論文が完成し、英語の編著本に掲載されるなど、成果が着実に上がっている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から引き続き、見えない危機の現象が今までよりも頻繁に起こっていることを踏まえ(例、インド・パキスタン、中国・台湾、日本・韓国)、それらの事例の精査をさらに行うほか、関係した実験の計画を実施する。2018年12月に起こった日本と韓国の間におけるレーダー照射事件は本研究のターゲットにしている見えない危機として示唆に富む事案であり、それをモチーフにした実験を計画し、そのデータ処理を進めたが、その成果をまとめ、論文として刊行していく。また、2017年に本研究チームで公刊したPolitical Communication誌掲載の実験をリーダーの名前を伴って拡張する実験については、エリートなりきり実験という形で2020年度末に実験を行い、そのデータ分析をPIである多湖を中心に実施する。そこにおける知見は、オンライン開催による国際会議での発表を行った上で論文化していく。
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