研究課題/領域番号 |
17H00974
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
河野 勝 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70306489)
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研究分担者 |
小林 誉明 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00384165)
大槻 一統 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (00779093)
古城 佳子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30205398)
建林 正彦 京都大学, 法学研究科, 教授 (30288790)
三村 憲弘 武蔵野大学, 法学部, 准教授 (40453980)
金 慧 千葉大学, 教育学部, 准教授 (60548311)
境家 史郎 首都大学東京, 法学政治学研究科, 教授 (70568419)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国際協力論 / 再分配 / 援助 / サーベイ実験 |
研究実績の概要 |
初年度は、援助が途上国にもたらすベネフィットとコストを援助を受け入れる側の一般の人々がどのように捉えるかを明らかにする理論モデルを構築をすることに重点的に取り組んだが、本年度(二年度)においては、当初の計画通り、そのモデルを実験デザインに落とし込み、必要な質問項目を整理した上で、フィリピンとミャンマーにおいてそれぞれ1000 人程度の回答者を対象とした調査を実施した。共同研究者とはメールやスカイプを通じて、調査票案を作成し、実験デザインを考案し、調査項目の順番と内容を確認し、文言の一字一句を検討する作業にいたるまで、慎重に討議を行った。そして、最終的に作成された英語の調査票を委託調査会社が現地語に翻訳した。二つの国で実際に調査をするに当たっては、研究チームの一人が必ず現地へ赴き、翻訳のニュアンスなども含めた調査項目および調査に使われるタブレット画面の最終的なチェックにあたり、また現地の調査員にたいして調査の進め方について指示を出した。最初に行ったフィリピンの調査では、調査進行中の中間時点で、少なくない回答者が質問の意図を取り違えた回答をしていることが判明した。その原因を急遽検討した結果、調査に使ったタブレットを途中で回答者に見せると、回答者の集中力が持続せず、なるべく早く回答肢を選ぼうとする傾向があるのではないかという結論に達した。そこで、その時点以降は、タブレットを最後まで回答者に見せないという聞き取り方式に切り替えた。二つ目の調査が行われたミャンマーでは、一貫してこの後者の方式で行った。データは、調査後迅速に、委託会社から納入され、予備的な分析を行った。なお、早稲田大学に設置されている「人を対象とする研究に関する倫理委員会」には、調査と実験を実施することを申請し、同委員会での審査を受け、事前に承認を受けたことを付記する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、初年度に「支援を受け取ることで人々の公共心や市民的活動への貢献を低下させたり自発的・創造的な経済活動を阻害したりして負の外部効果が発生するメカニズムを解明するための理論モデルを構築する」ことを目標と掲げていたが、それは達成された。また、二年度の前半までに、その理論的予測を検証するための仮説を構築し、それを実験デザインに落とし込む作業に進む」とされていたが、それも予定通りに達成された。さらに、2年度の後半には、二つの途上国において、調査実験を行うことが計画されていたが、それもその通りに達成された。当初予期していなかった状況としては、昨年度の報告でも書いた通り、申請段階から予算が大きく削減されたことにより、海外及び国内で行うサーベイ実験の規模と回数を、縮小しなければならない必要性が生じており、検討の後、海外で行うサーベイ実験を最優先とし、しかも各回のサンプル数を減らすことの悪影響はどうしても避けなければならないとの判断から、対象国を5から4に減らすという決定をした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度には、あと二つの途上国において、それぞれ800~1000 人程度のサンプル回答者に対してサーベイ実験を行う予定である。本年度と同様、サーベイ実験を行う際には、事前に少なくとも一人の研究者が研究目的の説明のため現地を訪れ、実査に関わる調査員たちに対する教育をする予定である。昨年の時点では、3年度にベトナムとカンボジアで調査を実施することを計画していると書いたが、カンボジアの政治情勢が依然として不安定であることに加え、(今年度のミャンマー調査の経験を踏まえて)政権に対する批判的言動が制限されているベトナムでの調査のデメリットを再考し、どこで実際に調査を行うかについては、最新の見積もりを取り寄せて、もう一度再検討することとした。四つの国からのデータが揃った段階で本格的な分析に取り掛かることになるが、その前にも各国のデータから個別の分析をすることが可能であるので、アメリカの研究協力者二人と連携を取りながら、そうした分析も適宜進めていく。今年度は最終年度に当たるので、後半には来年度以降にどのような形で成果を発表していくかを検討することになるが、その一つとして2020年度のアメリカ政治学会で報告することを目指して、今年度中にそのパネル申請(もしくは論文申請)を行う。
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