研究課題/領域番号 |
17H00985
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
渡部 敏明 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90254135)
|
研究分担者 |
大森 裕浩 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (60251188)
塩路 悦朗 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50301180)
新谷 元嗣 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00252718)
加納 隆 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90456179)
山本 庸平 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (80633916)
陣内 了 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (50765617)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | マクロ計量分析 / 経済予測 / 金融政策 / 財政政策 / VAR / DSGE / 資産価格の高頻度データ |
研究実績の概要 |
多変量自己回帰(VAR)モデルの改良については、係数と誤差分散を時変にした時変VARモデルを世界景気指数、円の実質実効為替レート、日本の実質輸出の3変数に応用し、係数と誤差分散を両方時変にすることで、それらの3変数の予測精度が高まることを示した。また、公的投資に関して、「外的操作変数を含むVAR」の手法を用いた実証分析を行った。DSGEモデルの改良については、新たな2部門労働市場マクロモデルやニューケインジアンフィリップス曲線を構築し実証分析を行った。 資産価格の高頻度データを用いた経済予測に関しては、日経225の高頻度データを用いて計算した分散リスクプレミアムが日本の将来の景気変動に対して予測力を持つことを明らかにした。また資産価格の高頻度データから得られる実現共分散行列を用いて、コレスキー分解に基づいた多変量ボラティリティモデルを構築し、ポートフォリオ選択のパフォーマンスが高まることを示した。 本研究の基礎となる計量手法についても、経済の構造変化をより正確に考慮する計量手法、マクロ経済時系列データの確率トレンドや非線形確率トレンドの正しい特定化の方法、経済がバブル期であるかどうかを識別する手法、大規模なショックを考慮するための極値理論の新たなモデル化とベイズ推定法を開発した。 その他、ニュースショックやVIXが為替レートに与える影響、消費税などに関するニュースが国債先物価格や国債VIXに与える影響を実証分析した。また、資産価格バブルや仮想通貨がマクロ経済に与える影響を理論モデルを使って分析した。さらに、沖縄の本土復帰前後における小売価格の歴史データを用いた、個別商品別実質為替レートに対する通貨体制の効果を識別・推定した。金融政策に関して、日銀の量的緩和政策が貸出に与えた影響や、2013年以後の量的・質的金融緩和が貸出に対して持った効果に関する実証研究を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心的課題である、VARモデルやDSGEモデルの改良、資産価格の高頻度データを用いた経済予測、また本研究の基礎となる計量手法に関して多くの重要な研究成果が得られた。それらの研究成果を国内外の学会等で計36件(うち招待講演15件/うち国際学会26件)の報告を行い、研究成果をまとめた論文が査読付学術誌に7本掲載された。特にVARモデルの改良では、VARモデルの係数や誤差分散を時変にした時変VARモデルを用いることで経済予測の精度が高まることを示した。その一方で、金融危機や東日本大震災等の大規模なショックを考慮するため、さらに誤差項の分布の改良も行ったところ、推定結果が不安定になったため、研究が中断しており、これについては再び平成30年度に進めていく予定である。それ以外の研究は順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究を中断している、時変VARモデルにおいて金融危機や東日本大震災等の大規模なショックを考慮するための誤差項の分布の改良については、本研究で行った極値理論の新たなモデル化の応用を試みる。 それと並行して、今後は予定通り研究を進める。平成30年度前半は、VARモデルとDSGEモデルを大規模データや周期の異なるデータを用いて推定できるように、ファクター・モデル、MIDAS を用いて拡張する。平成30年度後半は、それまでに改良・拡張したモデルを日本の大規模マクロ経済データに応用し、マクロ経済予測や金融・財政政策の効果の実証分析を行う。 また、平成29年度の研究成果の中でまだ査読付学術誌に掲載されていない論文を改訂し、新たな研究成果と共に査読付学術誌への掲載を目指す。
|