研究実績の概要 |
1) 本研究における理論基礎として、経済集積規模・空間配置と輸送費の関係に関する既存の経済集積理論モデルを網羅し一般化した多地域モデルの挙動を理論的に整理し、ディスカッション・ペーパーとして公表した。この研究では、既存の2地域経済モデルの下で輸送費の低下が、経済立地の分散→集積(一極集中)→再分散(地方の再生)の変化を起こすと論じてきたのに対し, 多地域経済では, 輸送費の低下過程の最初に起こるのは, 集積が小規模化・多数化し広範囲に散らばる「大域的分散」, 最後に起こるのは, 地方の再生ではなく, 既存集積の空間規模が拡大する「局所的分散」であり, それらが本質的に異なることを, 既存の理論モデル群に共通の一般的性質として解析的に示した。 2) 多地域・他産業経済における経済集積パターンの秩序形成について、経済集積モデルの内, 解析可能性の高いPflueger (2004)モデルを多地域・多産業に拡張し, 大型計算機で用いる並列プログラムを最適化し, 一年を通して基本パラメタ設定下で安定均衡のブートストラップ標本を蓄積した。具体的には、均衡における都市の規模・空間配置を特徴づける経済の産業構造は, Broda and Weinstein (2006)が米国データから推定した, 製造約14000品目の代替弾力性の分布を用いて、この分布から無作為に抽出した品目群を産業群として捉え仮想経済の産業構造を決め, その下で, 無作為に与えた人口の地域・産業間分布から自己組織的に均衡を得る試行を繰り返した。現在も均衡標本を蓄積中であるが、平成30年度に基本的な解析を行うだけのデータの蓄積は終えた。 3)(1)で扱った個々の理論モデルについて詳細に分析した結果を9編の論文にまとめ公表し、内4編を査読付国際専門誌から出版した。また研究成果の一部を9件の学会等)(内3件は国際会議)にて報告した。
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