研究課題/領域番号 |
17H01011
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
蓮花 一己 帝塚山大学, 心理学部, 教授 (00167074)
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研究分担者 |
朴 啓彰 高知工科大学, 地域連携機構, 客員教授 (60333514)
多田 昌裕 近畿大学, 理工学部, 准教授 (40418520)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高齢者 / 高齢ドライバー / 運転行動 / ドライブレコーダ / 速度行動 / ハザード知覚 / 確認行動 / 認知機能 |
研究実績の概要 |
第一研究である『高齢運転データベースの構築』では、平成30年度は脳ドッグを受診した高齢ドライバー24名(前期高齢者1名・後期高齢者23名)に対して、高知県自動車学校で運転行動の調査を行った。調査は、平成30年度11月にかけて高知県自動車学校において質問紙調査及び認知機能検査(MMSE)を行い、その後教習所内の運転行動を記録した。また、同一の調査対象者に対して、自家用車にドライブレコーダ(タカラ物流システムTBR-200)を設置し、一般道路での運転行動を約一か月間記録した。平成29~30年度に実施した調査により、50名男性42名・女性8名でデータ収集を行い、予備的な分析を行った。第二研究である各種指標と運転行動の関連について,教習所内の運転評価とMMSEの関連については全ての項目で有意な差はみられなかった。今後、教習所内と一般道路での走行時の運転行動と個人属性や質問紙調査の回答傾向との関連性を検証する。 第三研究では、高齢ドライバーの認知機能の低下が運転行動に及ぼす影響をより詳細に調べるため,75歳以上の高齢者10名を対象に,認知症状スクリーニングテスト,ハザード知覚テスト及び京都府内の教習所内コースでの実車走行を行った。認知症状スクリーニングテストとしては,MMSEに加え,前頭葉の機能を測るFrontal Assessment Battery(FAB)や記憶に関する検査であるADAS(Alzheimer's Disease Assessment Scale)を実施した。実車走行では画像処理型センサを用いて運転中の高齢者の安全確認行動を計測したほか,同乗の指導員による運転チェックを行った。その結果,MMSEの得点に問題がない者であってもFABの得点が他よりも低い事例もあり,記憶課題だけでなく,前頭葉を含む様々な脳機能の検査を実施する必要を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一研究及び第二研究の研究計画はほぼ順調に進行している。高知県自動車学校の協力により、調査に関わる教習所の施設、車両の貸与や指導員の協力を得ることができた。また,研究分担者である朴教授の尽力により、高知工科大学地域交通医学研究室の脳ドッグ受検者から調査参加者を得た。教習所調査では、室内調査と室外調査も順調に推移し、一般道路での調査に関しては、自家用車へのドライブレコーダ設置を高知市内の業者に委託し、現在も引き続きデータ収集中である。 さらに、教習所走行と一般道路走行の比較を行うため、教習所指導員に運転評価を試行的に実施した。実施方法は、指導員に自家用車のドライブレコーダ映像(信号交差点の右左折・無信号交差点の一時停止・見通しの悪い交差点・カーブ走行・バック走行)を見ながら運転評価を行ってもらう。その運転評価に基づき、教習所走行と一般道路走行の比較分析を平成31年度に行う予定である。 第三研究も、京都府内の教習所において、追加的に調査実施の承諾を得ている。研究協力者として、精神医学の専門家および臨床心理士の参加をすでに得ている。調査機器及び分析手法についても研究手法として確立している。課題は調査参加者の確保であり、分担研究者である近畿大学多田准教授及び京都府内の教習所の努力により進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
第一研究と第二研究では、平成30年度に試行的に行った教習所走行と一般道路走行の比較は一定の評価基準に基づき評価可能であることが分かったため、平成31年度は残りの45名に対して同様に運転評価を行う。 実施方法は、自家用車のドライブレコーダ映像(信号交差点の右左折・無信号交差点の一時停止・見通しの悪い交差点・カーブ走行・バック走行)を見ながら教習所指導員に運転評価を行ってもらう。教習所走行の指導員評価は平成29・30年にデータ収集は完了してる。2年間で得た50名分の教習所と一般道路での運転行動を、指導員評価とドライブレコーダでの行動指標に基づいて分析を行う。脳ドックでのMRIによる白質病変の程度、MMSEによる認知機能得点、質問紙での主観的健康感等と運転評価との関連を多変量解析を用いて分析し、国際会議や学術誌で公開する。 また第三研究では、実車走行データと認知症状スクリーニングテスト結果を比較し,どのような認知機能の低下が事故リスクを高める運転行動につながるのか明らかにするためのデータ収集と分析を行う予定である。
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