研究課題/領域番号 |
17H01016
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
明和 政子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (00372839)
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研究分担者 |
乾 敏郎 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (30107015)
小川 健二 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (50586021)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発達 / 乳幼児 / 相互作用 / 社会的認知 / 進化 / 自他分離 / 表象 |
研究実績の概要 |
(1)自己視点の抑制と深く関わる行動特性には,①自分の動作や行為を「模倣されること(被模倣)」への気づき(生後10ヶ月頃~),②ミラーシステムを基盤とする自動模倣の抑制(2歳半頃~)があるとみられる.本年度は,「自己視点の抑制」から「他者視点の知覚イメージ生成」の機能がいかに創発,発達するかを実証的に検討することを主たる目的とした.具体的には,自分と他者の間で生起する社会的相互作用において,無意識的に同期して生起する行動(自動模倣,他者の行為に含まれるリズムにあわせて産出される同調的行動)に焦点をあて,それらがいつ,どのように現れるかを,発達科学のアプローチから検討した.先行研究では,自動模倣を意識的に抑制しようとする行動は,生後2歳半を過ぎたあたりで確認できるとされてきた.しかし,本研究では,乳幼児にとってより簡便,適切な実験手法を開発したことによって,1.5歳児でも自動模倣の調整を図っていると解釈しうる行動を確認することができた.
(2)自己視点の抑制機能の獲得から他者視点のイメージ生成にいたる発達仮説を提案するために,2歳児および成人を対象に,向かい合った位置にいる他者が発する対象指示詞(「あれ」「これ」)の理解度および他者視点取得能力との関連を調べた.その結果,成人,2歳児ともに,他者から「これ」を聞いた後には,自分ではなく他者に近い方の物体を注視した.他方,他者から「あれ」を聞いた後には,2歳児では他者から近い/遠い2つの物体間で注視時間に差が見られなかった.また,2歳児では,標準化された視点取得課題の成績と指示詞理解との間に正の相関関係が認められた.
これらの成果は国内外の学術大会ですでに発表され,国際科学誌投稿に向けて準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画は,予定通り順調に進んでいる. なかでも,海外の共同研究者との情報共有と研究計画の具体化については,予想をはるかに上回る成果をあげることができている.平成30年3月に,本研究の主催として行った国際シンポジウム「What is Unique and What is Typical of Human Mind?」の大きな成果として,当該分野で最先端の研究者たちと今度取り組むべき課題とその手法開発の必要性についての意見交換を行うことができた.それをふまえ,平成30年6月に,米国・フィラデルフィアで開催された「International Congress of Infant Studies(ICIS)2018」およびカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)にて,共同研究を予定している海外の研究者たちと計画の打ち合わせを行った.当初予定では,上記国際シンポジウムより前の平成29年11月と12月に打ち合わせを実施する予定であった.しかし,打ち合わせ時期をシンポジウム後に変更したことによって,より具体的で効果的な議論を展開することができた.
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今後の研究の推進方策 |
現時点では当初の計画を順調に遂行できているため,特段の修正すべき点は見当たらない. ただし,次年度より「自己―他者視点の相互変換時の脳内ネットワークとその発達過程の解明」という新規課題に着手するため,調査参加者のリクルートを効果的に図る必要があるる.就学期の児童(6~12歳)を対象に,脳イメージング(MRI)を用いて脳構造・機能的変化を計測する予定であるため,保護者を交えた説明会・MRI体験デモなどのイベントを計画的にかつ丁寧に行っていく.
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