研究課題
「固体内慣性運動を実現する湾曲π面分子の構造科学」と題した本研究は,固体内分子機械という学際領域での新現象・新機能の発見・開拓を目指すものであり,1. 固体内慣性運動の実証・精密検証,2. 固体内慣性運動の一般化に向けた理論的解析およびそのフィードバックに基づく新奇ナノ分子機械の設計・合成,3. 固体内慣性運動のもたらす新現象・新機能の探索,の三つの主題項目について検討を進める計画である.研究初年度となる本年度は,研究全体の根幹となる項目1について主に検討を進めた.すなわち,研究分担者との連携により,13C核のスピン-格子緩和時間を精密に解析し,内部の回転子が,固体中,超高速で回転していることを見いだした.本研究課題で想定している慣性回転という異常な挙動が存在することを実証するための基本測定データが整ったこととなる.近い将来,物理的解析を加えることで,異常挙動の有無を確認する予定としている.初年度では,さらに,項目2についての予備的検討にも着手している.この検討からは炭素骨格に5角形を含んだ新奇構造をもつ新たな筒状分子の合成や,筒状分子が二つダンベル型回転子上に載った二輪型分子ベアリングの構築,さらにその構築時における特異な立体選択性などを見いだしてきている.以上,初年度では,想定通り~想定以上に成果が上がっており,二年度以降,本研究課題の推進により大きな成果につながることが期待できると考えている.
1: 当初の計画以上に進展している
研究分担者との連携に基づいた分子ベアリング内の回転子の回転速度の定量測定は順調,想定通りに進捗している.超高速回転の存在が確認されており,最難題である「慣性回転の実証」に向けての準備が完全に整った.一方で,二年目以降から着手予定あった項目2について,いくつかの検討を進めることができており,そのなかからすでに予備的知見が得られている.これを踏まえ,当初の計画以上の進展があったと判断した.
当初の計画以上に進展していると考えられることから,研究全般については大きな変更をすることなく,遂行していく.本研究課題での主要な項目のうち,1. 固体内慣性運動の実証・精密検証に関して今後の発展に繋がる重要な成果を得たので,これをもとに項目2,項目3について研究を推進する.計画通りに解析と設計・合成を進めるのはもちろんのこと,今年度に発見した配向相転移の制御など,想定外の発見を念頭に置いた検討を進める.
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