研究課題/領域番号 |
17H01034
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福島 孝典 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70281970)
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研究分担者 |
尾原 幸治 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (00625486)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自己組織化 / ソフトマター / シングルドメイン / X線構造解析 / 音波浮遊 |
研究実績の概要 |
本研究は、過去に研究代表者らが見出した、世界的にも、歴史的にも類を見ない、新たな性質を示すシングルドメインソフトマターの構造、相挙動、粘弾性、力学特性の解明からスタートし、その展開(課題1)、発展研究(課題2)、およびその融合研究を通じ、ソフトマターの基礎科学に新たなフロンティアを築くことを目的とする。課題1では、自発的シングルドメイン化をもたらす構造要素とメカニズム、さらにそこに潜む物理化学を探求し、シングルドメインソフトマターを形成する分子ライブラリを構築する。課題2では、世界で初めて音波浮遊技術をソフトマターに適用し、シングルドメイン化を可能にする「分子自己集合場」を設計する。上記の課題から得られる物質の構造物性相関を多角的に調べ、シングルドメインを形成するソフトマターの合理的設計指針を提示するとともに、分子配向・配列秩序が「完璧」に制御された物質が生み出す機能を探る。 平成30年度において、課題1では、分子凝縮相に関する既存概念では説明しえない性質を示す分子集合体の構造と相挙動および分子集団運動について詳細に検討した。この分子集合体は、液体からの冷却により、あたかも液滴のようなバルク形状を示す。しかし、この液滴は、高度な三次元構造規則性を有する分子集合体であり、しかも単結晶様のシングルドメイン構造をとる。さらに、見かけ上は三次元構造規則性を保持したまま流動するという特異な性質を示す。この振る舞いは結晶とも液体とも液晶とも異なる。これらの成果をまとめてNature Mat.誌で論文発表した。課題2では、空気界面だけの状態で分子集合体を構造化させるために、音波浮遊装置を中心とした試料作製装置一式と構造解析用のX線回折装置を整備し、棒状および円盤状液晶の構造形成挙動の検討を行った。その結果、ミリメートルオーダーのシングルドメイン構造を有する球体が作製できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1については、シングルドメインソフトマターを形成する物質の分子集合構造、相挙動の検討を進め、そこから分子集団運動の検討を、当初の計画通り進め、論文発表を行った。課題2については、音波浮遊装置の整備とともに、音波浮遊した円盤状液晶および棒状液晶が、固体基板上とは異なる分子集合構造を形成することを見出した。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
シングルドメインソフトマターを形成する物質ライブラリの構築とシングルドメイン形成を可能にする自己集合場を利用し、下記の研究課題を中心に実施する。 課題1については、これまでに得られた知見を活かし、シングルドメイン形成を可能にする分子設計概念を導き、自発的にシングルドメインを与える系の拡張を図るとともに、物性研究へと軸足を移す。具体的にはシングルドメイン化(=分子配向の完全制御)した物質の力学物性を徹底的に調べる。 課題2については、「自己集合性高分子」を対象に、音波浮遊によるシングルドメイン化の検討を行う。側鎖型液晶性高分子に焦点を当て、液晶ポリマーのシングルドメイン形成のみならず、液晶モノマーの音波浮遊状態における重合反応によるシングルドメイン形成にも挑戦する。さらに、放射光X線回折測定により重合反応中の構造形成過程をリアルタイム観察する。それらの観察結果に基づき、通常の基板上での構造化との相違を明らかにする。
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