研究課題/領域番号 |
17H01037
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
遊佐 剛 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40393813)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 半導体物性 / 磁気共鳴イメージング / 超高速分光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、光検出核磁気共鳴を基礎としてイメージング測定に拡張した光検出磁気イメージング(MRI)を、時間分解測定と組み合わせることで、物理現象の「動き」を可視化できる光検出時間分解MRIを確立し、従来の限られた材料系(GaAs系半導体)だけでなく、紫外~赤外に光応答を持つさまざまな物質に適用することで、より汎用性の高い測定技術へと進化させることである。 2019年度はGaN系材料に関して、波長350nm付近の紫外領域における発光現象をプローブとして用いることにより酸素やシリコン不純物がどのようにしてGaN構造に取り込まれるかを、二次イオン質量分析法と比較しながら定量的に解析することができた。また波長900nm付近の赤外領域では励起レーザーにグレーティングとスリットを導入し、パルス時間幅とエネルギー幅を系統的に制御できる光パルスシステムを組み入れたことにより、自由度の高い高速時間分解測定が可能となった。またストリークカメラを用いた励起子の寿命測定もGaN系およびGaAs系ナノ構造において進めた。これらの超高速時間分解分光と走査型顕微システムを組み合わせ、GaAs系半導体において量子ホールエッジ状態の時間空間分解による実時間実空間イメージング測定に成功した。汎用性のある測定技術として、カー回転をプローブとして顕微システムの開発については、実際のダイカルコゲナイド系やGaAs系試料において良好なデータが得られていないものの、開発自体はおおむね完了した。今後は核スピンの時間応答についてより詳細に測定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は前年度に引き続き装置の修理、装置開発等を進めた。主たる測定装置である希釈冷凍機超伝導マグネットシステムの不具合が頻発し修理にかかる時間が必要だったものの、使用可能な範囲で測定を進めることができた。従来の顕微システムと半導体の発光現象をプローブにした超高速時間分解測定の統合による超高速時間分解顕微分光を用いたGaAs半導体系の研究は予想より早く成果が得られた。一方カー回転をプローブとした顕微イメージングはまだ期待した成果が得られていないが、GaAs系のスピン輸送現象についてはおおむね期待通りの成果が得られたため、本研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は2019年度に引き続き、今年度の早い段階で希釈冷凍機の不具合の修理を完了させ、精密でより安定した測定を長時間行える環境を整備することを優先課題とする。カー回転による測定系はSN比をより向上させより微小なカー回転角を測定できるように改良するとともに、サニヤック干渉系による磁気光学効果をプローブにした測定系の有効性も検討し、早い段階で導入を図る。これらの測定系を用いて、GaAs系、GaN系、ダイカルコゲナイド系を対象材料とし、紫外から赤外領域で光検出核磁気共鳴および磁気イメージング法を確立させ、低次元系での物理現象について探索する予定である。
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