研究課題/領域番号 |
17H01041
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三澤 弘明 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30253230)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / 高効率太陽光発電材料・素子 / プラズモン / 光アンモニア合成 / 人工光合成 |
研究実績の概要 |
局在プラズモンを利用した光アノードにおいては、光散乱の抑制が高効率な電子-正孔対生成の鍵となる。平成29年度は、3次元フォトニック結晶のストップバンドモードと局在プラズモンモードを結合させ、プラズモンからの光散乱を抑制可能なプラズモン光アノードを構築し、3電極系の光電気化学測定により構築した光アノードの光電変換特性を評価した。研究項目として、1)酸化チタンの逆オパール構造を有する3次元フォトニック結晶電極を透明導電性電極基板上に作製し、その結晶内に金ナノ微粒子を担持してプラズモン光アノードを作製し、光電変換特性を評価、2)水の多電子変換を促進するため、助触媒として高効率な酸素発生を可能にするCoOxをプラズモン光アノードに担持し、水を電子源とするプラズモン誘起光電変換特性を評価した。1)では、逆オパール構造の鋳型となるオパール構造を任意のサイズのポリスチレンナノ微粒子を積層させることにより作製し、ALD装置により空隙に酸化チタンを充填後、アニールによりポリスチレンを除去することにより酸化チタンの逆オパール構造を作製した。作製した3次元フォトニック結晶電極を用いて電解メッキを行い、フォトニック結晶構造中に金ナノ微粒子を担持した。メッキ液の濃度、反応温度、電流密度などのパラメータを変化させ、生成する金ナノ微粒子のサイズや形状を検討し、プラズモン共鳴帯の波長域を制御する方式を確立した。分光測定から、プラズモンとストップバンドとの相互作用を確認し、可視波長域での光電変換効率の増大を確認した。2)では、プラズモン光アノードにCoOxを担持して光電変換効率を検討したところ可視域での光電変換効率の増大は観測されたものの、極めて増強されるわけではなかったことから、今後膜厚や成膜温度など助触媒形成の最適化が必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フォトニック結晶と結合する局在プラズモンを用いた光アンモニア合成に関して、平成29年度は光アノードの最適化を目的として研究を進め、当初の予定通り金ナノ微粒子を担持したフォトニック結晶電極の構築に成功し、可視域での光電流の増大を確認した。本研究では、さらにフォトニック結晶と同様に光を閉じ込める性質を有する導波路や共振器とプラズモンとの強い結合から、可視光の幅広い波長域の光を効率的に閉じ込める光アノードの作製に成功した。特に、ナノ共振器とプラズモンとの結合系では、最大で98%の光を吸収する光アノードの構築に成功するとともに、内部量子収率の増大も明らかになった。ナノ共振器と結合する局在プラズモンを用いた光アノードの開発は、当初の計画には含まれていなかったが、飛躍的な効率の改善が得られたことから、本研究が当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
プラズモンとの強い結合を示す各種光アノードの開発に成功した。今後は、酸化(水の酸化による酸素発生)と還元(空中窒素の固定によるアンモニア合成)の助触媒、およびその成膜方法を最適化するとともに、開発した光アノードにより水を電子源としたプラズモン誘起光電変換が効率的に進行するメカニズムについて分光測定により明らかにする予定である。特に、本研究によって明らかになったナノ共振器と結合する局在プラズモンを用いた光アノードは、他の光アノードに比べて高い光電変換効率を有していることから、今後アンモニア合成・助触媒の最適化・メカニズム解明への利用を計画している。
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