研究課題/領域番号 |
17H01042
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西原 洋知 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (80400430)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グラフェン / 多孔体 / 弾性 / キャパシタ / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
単層グラフェン多孔体の触媒担体への応用を検討するため、アルミナナノ粒子を鋳型として合成されるグラフェンメソスポンジにピレンを介した金属ナノ粒子の高分散担持を試みた。その結果、ベーサル面が発達したグラフェンメソスポンジにはピレンが強固に固定化され、金属ナノ粒子を高分散で担持することができた。また、ゼオライトを鋳型として合成される単層グラフェン多孔体であるゼオライト鋳型炭素について、高密度ペレット作製の検討を開始した。ゼオライト鋳型炭素の重量当たりの比表面積は約3800m2/gに達するが、体積当たりの比表面積は647 m2/cm3程度に留まっているため、水素貯蔵などガス吸蔵へ応用する際には体積当たりの貯蔵量が小さくなってしまういことが課題である。そこで各種ポリマーや無機材料、ならびに酸化グラフェンをバインダーとして少量混合してホットプレスを行うことで、高密度ペレットの調製を試みた。各種バインダーを検討した結果、酸化グラフェンが特異的に強固なペレットを形成でき、なおかつ体積当たりの比表面積を従来の2.6倍である1686 m2/cm3にまで引き上げることに成功した。また、グラフェンメソスポンジの高分子固体形燃料電池用のカソードPt担体としての応用検討も開始した。グラフェンメソスポンジはエッジサイトがごく少量しか存在しないためPtナノ粒子のアンカーサイトが無いと予想されたが、2-3nmの微小なPtナノ粒子を高分散担持できることを見出した。特異的なメソ多孔構造がPtナノ粒子の足場として機能していると考えられる。さらに、調製したPt担持グラフェンメソスポンジは従来のPt担体カーボンに比べ、Pt露出面積が高く触媒活性が高いことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在に至るまでに、単層グラフェン多孔体であるグラフェンメソスポンジが新型のヒートポンプに利用できることを見出し、また電気二重層キャパシタ電極として4.4Vに達する高い電圧耐性を示すことを発表している。後者の論文はTOP1%論文となり注目を集めた。本年度はさらに単層グラフェン多孔体の応用の幅を広げるべく、高密度ペレットの調製と水素貯蔵への応用、触媒担体への応用、固体高分子形燃料電池のカソードPt担体への応用の検討を開始し、いずれも良好な結果が得られている。さらに、全固体リチウム硫黄電池の正極硫黄担体としての応用に関する検討も開始しており、良好なデータが得られている。このように、計画書に記載していた以上に、様々な用途展開ができており、当初の計画以上に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
単層グラフェン多孔体であるグラフェンメソスポンジについて、引き続き全固体リチウム硫黄電池の正極担体としての応用に関する検討を進める。また、金属酸化物表面に高温でメタンが接触した際に、どのようにメタンがグラフェンに変換されるのかを明らかにするため、高温でメタンを流通させつつ熱重量測定や出口ガスの組成分析を行い、反応機構を検討する。イギリスの計算科学を専門とするグループとも連携し、特に化学気相蒸着の初期にどのような化学反応が生じているのかを明らかにする。さらに、グラフェンメソスポンジの量産化に向けた安価な合成法の検討も行う。従来はアルミナナノ粒子を鋳型材に用い、ここに高温でメタンを接触させることでグラフェンを成長させ、アルミナ粒子をフッ化水素酸により除去した後に1800℃でアニールしてグラフェンメソスポンジを調製していた。しかし、フッ化水素酸による鋳型の溶解除去はコストが高く量産には不向きである。そこで、塩酸で容易に除去可能な酸化マグネシウムナノ粒子や酸化カルシウムナノ粒子を用いたグラフェンメソスポンジの合成ルートを新たに開拓する。さらに、これらの金属酸化物表面におけるメタンのグラフェンへの転換反応についても詳細な解析を行う予定である。
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