研究課題
単層グラフェン多孔体の更なる展開を目指し、各種用途に向けた応用検討を行った。まず、ホットプレスによる高密度ペレットの調製と水素貯蔵への応用に関する検討を行った。ゼオライトを鋳型として合成される単層グラフェン多孔体「ゼオライト鋳型炭素」は炭素材料としては最高レベルの約3800m2/gの比表面積をもつが、体積当たりの比表面積は647 m2/cm3程度に留まっているため、体積当たりの水素貯蔵量が小さいことが課題であった。そこで酸化グラフェンをバインダーとして少量混合してホットプレスを行うことで、グラフェンから成る高密度ペレットを調製した。酸化グラフェンとゼオライト鋳型炭素の系ではホットプレス中に炭素エッジサイトにおいて大量のラジカルが発生し、これが化学結合の形成を促進して強靭なペレットが調製可能であることを見出した。ホットプレス処理の条件を最適化したところ、体積当たりの比表面積を最大で1686 m2/cm3(従来の2.6倍)まで引き上げることに成功した。調製した高密度ペレットは、体積当たりの水素貯蔵量として、10.5 g/Lを達成した。一方で、高密度ペレットは77KのN2吸着量が異常に大きく、細孔内部においてN2が固体に近い密度で存在していることが示唆されるなど基礎科学的にも興味深い結果が得られた。水素吸蔵の他にも、高分子固体形燃料電池用のカソードPt担体としての応用検討、全固体Li/S電池正極担体としての応用検討を実施し、それぞれの分野で単層グラフェンナノ多孔体の利点と高いポテンシャルを実証することができた。さらに、量産化に向けた安価な材料合成法に関する検討も行い、従来は鋳型除去に必須であったフッ酸を利用しないより安価で大量生産に適した調製ルートの開拓にも成功した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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