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2017 年度 実績報告書

ナノ材料の力学・熱伝達特性をその場観測する電子顕微鏡内MEMS実験系の構築

研究課題

研究課題/領域番号 17H01049
研究機関東京大学

研究代表者

藤田 博之  東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90134642)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードMEMS / TEM / その場観察 / 熱伝導 / 材料力学
研究実績の概要

DLCの機械試験による摩耗粉の実時間観察 : 機械試験を行うために独自に開発したMEMSデバイスを用いて, 硬質材料として知られるDLC(Diamond Like Carbon)の機械試験を行った. ここでいう機械試験は具体的には, MEMSデバイスに集積した探針先端にDLCを成膜し, その探針同士を擦り付けることによってDLCの接点で何が起こるかをナノスケールで観察したという内容である.
観察の結果, 擦り付けによってDLC表面に直径十nmほどの摩耗粉がいくつも出現し, その摩耗粉が滑ったり転がったりしていることを直接観察できた. 形状変化を透過型電子顕微鏡で観察するだけでなく, 摩擦力をリアルタイムで計測することで, 力の変化と表面構造の変化の関係も明らかにした. さらに, 接触箇所を直接観察できる利点をいかして, 接触箇所にかかる真応力も計算した. するとその真応力はGPaオーダーにものぼるっていることが分かった.
実験の結果から摩耗粉の出現によって表面が削れてしまっているため, 摩擦力が抑えられていればそれだけで表面処理として十分ではないということを実証した. さらに, 表面の状況をリアルタイムで観測でき, 応力も測れる本実験系の手法は材料表面で何が起こっているのかを解明するために強力な手法であることを実証した.
詳細をWTC2018 Beijingにて口頭発表した. また, 数ヶ月後に出版予定の学術論文誌nanotechnologyに内容の詳細が掲載される予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

(1) ナノギャップ間の熱伝導特性の計測 : ヒーターと熱センサー, さらにヒーター・センサー間のギャップを縮小させるためのアクチュエーターを集積したMEMSデバイスを作製した. FIBによりギャップを作製し, TEMの中でアクチュエーターによる制御を行ったところ, 最小で20nmまでギャップを縮小できた. これは、従来研究で達成できている最小間隔のさらに半分である. 熱伝導特性の計測系の構築も行った. ヒーターとセンサーは、金属電極に電流を流すことで加熱し, 抵抗変化により温度変化を算出した. 新しい計測系で交流電流を流し, 変動する抵抗変化をホイーストンブリッジにより検出した. この手法をとることにより, ~1mKの温度変化を検出することが可能になった. また, デバイスの熱伝導モデルのシミュレーションも構築し, 熱伝導特性の理解も進めている. このため, 全て計画していた通りに開発が進んでいる.
(2) 新たな実験系の構築: 予定では接触箇所の変形をナノレベルで観察する研究計画であった. しかし, TEMの試料ホルダーを新たに開発できたため, 今では50pm(ピコ メートル)の分解能をもつTEMでの観察が可能になりつつある. この実験系が完成すれば, 予定していた「ナノスケールの形状変化と摩擦力の変化との関係を明らかにする」ではなく, 「原子の動きと摩擦力の変化との関係を明らかにする」が可能になるため, より微視的な機構が解明できるようになった. このため, 計画していたより精度と分解能の高い実験系が構築できつつある.

今後の研究の推進方策

(1) 試料の設置方法の改善 : 今までは真空蒸着やスパッタリングによって探針先端に材料を成膜していた. この場合, 単結晶を観察できない, 成膜できない材料は観察できない等, 観察できる試料が非常に限られていた. 今年度ではFIB-SEMを使うなどして, 探針先端に目標とする試料を置く手法を構築する. これに研究によって, より多種の材料の変形過程をリアルタイムで観察できるように実験系を改善する.
(2) ナノギャップ間の熱伝達特性:昨年度は, 熱伝達計測の実現に必要なマイクロマシンを開発し, さらにロックインアンプなどを組み合わせることで計測系を改善した。今年度はまず、熱特性が既によく分かっているシリコン薄膜の熱特性を計測することで, 構築した実験系が正しく機能していることを確認する。計測系に間違いがないことを確認できたら, マイクロマシン技術で作成した1um×1umの平面を10nmの距離までに近づけ, 1nW/Kの精度でそのギャップ間に放射される熱伝導を計測する.
(3) 原子観察のための実験系の開発 : 昨年度は50pm(ピコ メートル)の分解能を持つTEMに, マイクロマシンを試料として入れるためのTEM試料ホルダーを開発した. しかし, 試料の結晶方位とTEMの電子ビームの方向と一致させないと, 原子を観察できない. すなわち, 試料をTEMの内部で自由に傾斜できるようにしないと, 原子を観察できない. 要は, 試料を傾斜するための回路を作成する必要があるということである. そこで傾斜角度を制御するための制御盤の開発する. この開発によって, 原子分解能を持つTEMの内部にマイクロマシンを入れられる実験系を完成させる.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)

  • [学会発表] MEMS Energy Harvesters for IoT Sensing Nodes2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Fujita
    • 学会等名
      International Research Group NAMIS workshop
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Real time TEM observation of metallic nano-asperity friction2017

    • 著者名/発表者名
      T. Sato, M. Vivek, H. Fujita
    • 学会等名
      WTC2017
    • 国際学会
  • [学会発表] FROM WOW TO WORK: CYCLES OF MEMS EVOLUTION2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Fujita
    • 学会等名
      IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS’18)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] On-Chip Fluidic Actuation for TEM Liquid Cells2017

    • 著者名/発表者名
      Matthieu Denoual, Vivek Menon, Takaaki Sato, Hiroyuki Fujita
    • 学会等名
      TAS 2017 (21st International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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