仮材料の破壊試験について:昨年度の研究が遂行される以前は、破壊したい試料をマイクロマシンに設置し、マイクロマシンを透過型電子顕微鏡の内部に入れると、破壊試験を行う前に既に試料が壊れてしまう問題があった。そこで、梁の剛性バネ定数・アクチュエータの大きさ・梁とアクチュエータの間隔といったマイクロマシンの寸法を調整することで、透過型電子顕微鏡の内部で試料を破壊できるように実験系を改善した。また、新たに作成したマイクロマシンは、透過型電子顕微鏡の内部で試料を傾斜できる新しい試料ホルダーに合うように設計した。このため、試料の結晶方向を調節できるようになり、原子由来の格子縞を観察するのではなく個々の原子を観察できるようになった。この新しい実験系を用いて、薄膜の破壊試験を遂行した。Au薄膜とSrTiO3単結晶薄膜を用い外力によって亀裂が進展し、試料が割れる様子を観察した。 熱伝導試験について: 一般に用いられている温度計測の方法は、まず、ある固定されたヒーターの入力電圧・入力周波数において、環境の温度変化に伴う抵抗値の変化を計測することでヒーターとセンサーの抵抗温度係数を計測する。次にヒーターの入力電圧や入力周波数を変化させながら、ヒーター・センサーの抵抗値を計測し、先に計測した抵抗温度係数を用いてヒーター・センサーの温度上昇を算出する。こうすることで、ヒーター・センサー間に設置された試料の温度特性や周波数特性を得ることができる。しかしその手法では、入力電圧や周波数を変化させたときの抵抗温度係数の微小な変化を無視したことになる。本研究では、入力電圧や周波数を変化させ、その都度抵抗温度係数を計測できるシステムを構築した。あらゆるパラメーター下における抵抗温度係数を厳密に測ることができるようになったため、より正確な熱計測を行える実験系を構築できた。
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