研究課題/領域番号 |
17H01050
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 基史 京都大学, 工学研究科, 教授 (00346040)
|
研究分担者 |
杉村 博之 京都大学, 工学研究科, 教授 (10293656)
名村 今日子 京都大学, 工学研究科, 助教 (20756803)
巽 和也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90372854)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 流れの特異点 / マランゴニ力 / 光熱変換 / ナノ形態制御薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究計画では平成29年度~31年度の3年間で,1) 擬似ストークス源のキャラクタリゼーション・モデリングと制御技術の確立,2) ナノ形態・表面状態を制御した表面における流れの計測・評価,3) 光熱変換部のパターニングによる面内温度分布の形成と流れへの影響調査,4) 複合擬似特異点の配置による流れの制御 の4つの課題に取り組む計画であり,平成29年度には1), 2), 4)に着手した. 1) では,疑似ストークス源観察用の新しい顕微鏡システムと高速度カメラを導入し,微小水蒸気気泡が数100 kHzの振動数で激しく振動しており,高速流れの発生に重要な役割を担っている可能性を見出した. 2) では,自己集積化単分子膜によって表面エネルギーを制御することで,微小気泡の形態とその周囲に誘起される流れの強さやパターンの関係を明らかにした.また,表面のナノ形態を制御するために新たにイオンビーム照射装置を立ち上げ,平成30年度に強い異方性凹凸を有する表面上での流れを研究するための準備を行った. 3)では,空間光変調器を計画を前倒して導入し,微小水蒸気気泡生成・維持するためのレーザースポットの近傍に別のレーザースポットを照射することで非対称な温度分布を生成することに成功した.温度分布を非対称にすることで,微小水蒸気気泡周辺に誘起される流れも非対称になり,光熱変換だけを使って一方向の流れを生成するための手がかりをつかんだ.誘起された流れは,微小水蒸気気泡上に傾いた疑似ストークス源によって誘起される流れでモデル化できた.すなわちレーザーの多点照射によって,その周辺に誘起される疑似特異点の対称性を制御できる可能性を示すことができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
微小水蒸気気泡とその周辺の流れをキャラクタリゼーションする顕微鏡や酵素速度カメラの導入,表面のナノ形態を制御するためのイオンビーム照射装置の導入は計画通り完了した.また,レーザーを多点照射するための空間光変調器を前倒し導入したため,疑似特異点の合成に関する研究については計画よりも進んでいる. 総合的には当初の計画よりも若干進んでいると判断する.
|
今後の研究の推進方策 |
[課題1: ナノ形態制御表面の化学修飾 (鈴木,杉村,名村,大学院生2名)] 親疎水の特性を増強した超親水・超疎水表面を実現し,1) 気液の相転移を伴う気泡生成における形態と表面エネルギーの影響 ,2) 気泡の形態による擬似ストークス源の特性変化,3) 壁における流体の滑りや境界条件の異方性の発現,について詳細に調 査する.初年度で確立した流れの計測・評価技術と表面ナノ形態制御技術,表面エネルギー制御術を融合し,当研究グループの 総力を挙げて取り組む. 本課題によって,壁における滑りなしの境界条件や,流れの対称性を崩すことができれば,ストーク源以外の渦源や二重湧き 出しなどの擬似特異点を顕在化させてその特性を実験的に明らかにすることができる. [課題2: 複合擬似特異点の配置による流れの制御(名村,鈴木,巽,大学院生1名)] 粘性流体の特異点を合成すると,任意の流れを表現できることが知られている.そこで,擬似特異点を複数配置し,実際に特 異点の合成によってどのような流れが誘起されるか調査する.複数個の特異点の生成には同時に複数の気泡を生成する必要があ るが,本年度はLSMを用いてレーザを多点照射することで実現する. また,誘起される流れをモデリングして,流れの設計・制御の実現に向けた取り組みを開始する.
|