研究課題/領域番号 |
17H01055
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
竹内 哲也 名城大学, 理工学部, 教授 (10583817)
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研究分担者 |
田中 崇之 名城大学, 理工学部, 准教授 (10367120)
宮嶋 孝夫 名城大学, 理工学部, 教授 (50734836)
井手 利英 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (90397092)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 窒化ガリウム / 面発光レーザ / トンネル接合 / 電流狭窄 / 光閉じ込め / 多層膜反射鏡 |
研究実績の概要 |
本研究では、GaN面発光レーザの「高効率・高出力化」、「長波長化」、「高速変調」を目指して進めている。以下に平成29年度の実績を報告する。 高出力化として、波長410nmのGaN面発光レーザにおいて、層構造などの最適化により下部4.2mW、上部1.0mWの計5.2mWの出力を実現した。次年度目標の6mWに近い値を前倒しで実現したことになる。一方、外部微分量子効率は13%のままである。高効率化に向けては横方向閉じ込めとトンネル接合の適用を進めたが、現時点で効率改善にまでは至っていない。一方で、光吸収の少ないGaNトンネル接合が実現した。 長波長化に向けて、既存のAlInN/GaNを厚膜化することで、反射中心波長を570nmまで長波長化させたDBRを作製した。その結果、520nmまでは、屈折率から予想される理論反射率に近い測定値が得られたが、570nmでは、比較的大きな反射率の低下が確認された。XAFS法により、AlInNにおけるIn、Al原子ともにウルツ鉱構造における理想的なIII族原子位置を占有していることが明らかになった。活性層の長波長化として、2nm AlGaNキャップ層と高温GaNバリア層の導入により、600nmまでのPL発光と、575nmまでのEL発光を得た。そのEL強度は、青色の場合の1/6程度であった。格子不整合の程度を成長中に測定可能な、その場基板反りモニタを導入し、現在、調整中である。 高速変調に関して、測定のためのパルス光特性評価システムを構築した。主に波長450nmのGaN青色レーザを用いて性能確認した結果、パルス発生器評価系で約500MHz、ネットワークアナライザ系で約1GHzまで評価可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高効率・高出力化では、効率は改善されなかったものの、出力は改善され、ほぼ次年度目標を達成しつつある。長波長化もDBRおよび発光波長において500nmを超えるものが形成可能になっている。高速変調に関しては、システムの検証が進んだが素子形成は遅れている。以上、大きく進展した項目と、あまり進展していない項目がそれぞれ存在することから、平均的におおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は以下の計画に沿って進める予定である。 高効率化に対して、段差のない光閉じ込め構造、および段差の少ない埋め込みトンネル接合を試みる。いずれも段差があることによって、性能が制限されている、あるいは構造形成が困難になっている現状を考慮した判断である。高出力化に関しては、これまで行っていなかった、光閉じ込めと大口径化の同時導入により、従来の大口径化による発振停止を抑制することで高出力化を実現する目論見である。さらに活性層構造の最適化や、導電性DBRの導入を進め、より赤外面発光レーザに近い理想の構造を我々の標準構造として確立していく。 長波長化に関して、前年度実現した構造を用いて、520nm緑色面発光レーザを形成、実現、もしくは課題を明らかにする。同時に、新しい長波長用DBR構造に向けた要素構造確立も開始していく。一方で、AlInN単膜やヘテロ構造の構造評価(XAFS、TEM)を引き続き進めることで、現状の結晶品質把握し、さらにその結晶品質を向上することで、高品質素子形成を確立する。 高速変調に関して、まずは電極形状を高速変調用に変更した素子を試作し、その測定を進め、現状を把握するとともに課題を明らかにする。
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