研究課題
炭化ケイ素(SiC)中の単一光子源(SPS)としてシリコン空孔(Vsi)及び表面SPSなどに着目し、これらSPSをpinダイオードや金属-酸化膜-半導体(MOS)電界効果トランジスタ(FET)などのデバイスに導入する技術を開発するとともに、それらSPSの発光特性に関する研究を推進した。2017年度は0.5 MeVのエネルギーを有する陽子線マイクロビームをSiC pnダイオードの任意位置に照射(陽子線描画、PBW)して欠陥導入を行った。欠陥を導入した位置のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを測定することでVsiが形成されていることを確認した。その後、順方向に電圧印加することでダイオードに電流を流し、その電流によってVsiが発光(EL)するかを調べた。その結果、PBWを行った位置からELが観察され、そのスペクトルを調べたところVsiであることが判明した。このことより、量子デバイス実現に向けたデバイス作製プロセスとしてPBWが有用であることを実証したといえる。今後、ELを用いた光検出磁気共鳴(ODMR)に関する研究を進める予定である。VsiのODMRに関する研究も並行して推進した。ここでは、PBWにより格子状にVsiを形成し、形成したVsiのODMR観察を試みた。その結果、理論値である70MHzでPL発光強度が上昇するとともに(ODMRピーク)、磁場印加によりODMRピークが分裂することを確認し、VsiのODMR観測に成功した。一方、表面SPSに関しては、酸化によりpnダイオード中に表面SPSを導入した。ダイオードに電圧を印加した状態でPL測定を行ったところ、逆方向電圧の増加とともにPL発光強度が増加する表面SPSが存在することを見出した。また、順方向電圧印加、即ち電流注入によりEL発光する表面SPSも存在することも併せて見出した。
2: おおむね順調に進展している
Vsiの形成にPBWが有効であることを実証し、計画通りデバイス内にVsiを導入できている。表面SPSにおいてもデバイス動作での発光制御に成功している。以上より、研究は順調に研究が進展していると判断する。
計画通りVsiや表面SPSをSiCデバイス内部に導入することに成功している。今後は、量子デバイス応用で重要となるスピン操作を目指し、Vsiにおいては、デバイス動作によるEL発光を用いた光検出磁気共鳴(ODMR)を試みる。表面SPSに関しては、その構造同定を目指し、PLスペクトルの詳細解析、アンチバンチング特性の励起光依存性などの詳細な特性評価を行っていく予定である。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 8件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.taka.qst.go.jp/eimr_div/RadEffects/index_j.html