研究課題/領域番号 |
17H01061
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
李 艶君 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50379137)
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研究分担者 |
内藤 賀公 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90362665)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 走査プローブ顕微鏡 |
研究実績の概要 |
原子数個から数十個からなるナノ磁性体は、強い量子サイズ効果を示し、閉じ込められた電子のエネルギー状態とスピン状態は、バルク材料のものとは全く異なる。新しい機能を有するナノ磁性体を思い通りに設計するには、スピン間の交換相互作用の理解が重要である。そこで、本研究は、強磁性共鳴を用いた磁気交換力顕微鏡を駆使して、表面上に構築されたナノ磁性体の原子スケールの交換相互作用を測定し、ナノ構造体を構成する原子数や次元、構造が磁気相互作用にどのように影響するかを解明することを目的とする。 磁性体探針の磁化状態を強磁性共鳴により高効率に変調できるようにした。具体的には、マイクロ波同軸ケーブル先端の形状を最適化し、そこから漏洩するマイクロ波を磁性体探針に効率よく照射できるようにした。 また、交換力を高感度に測定するための観察条件を実験的に検討した。具体的には、周波数シフトの変調成分の探針・試料間距離依存性を測定し、信号とノイズの比(SN比)が最大となる振動振幅を数値計算により求めた。なお、探針としては高保磁力の磁性体である鉄白金(FePt)をコートした探針を、試料としては反強磁性体のイオン結晶である酸化ニッケル(NiO)の表面を取り上げた。 さらに、ナノ磁性体の磁気的性質を解析するため、磁性体探針と磁性体試料の間に働く交換エネルギーを導出する分光法を開発した。具体的には、探針・試料間距離を変えながら、カンチレバーの周波数シフトに含まれる変調成分を測定し、それを数値計算により交換力へ変換し、さらに積分により交換エネルギーを導出できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、磁気交換力顕微鏡の超高感度化と超高分解能化を実現する様々な要素技術について検討を行った。その結果、交換力を最も高感度に測定するための観察条件を実験的に解明することに成功した。また、カンチレバーの周波数シフトに含まれる変調成分から交換力と交換エネルギーを導出する方法を開発することにも成功し、おおむね、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、カンチレバーの小振幅動作と高周波化、変位検出計の高感度化を実現する。また、原子操作技術を用いて構成原子数の明らかなナノ構造体を絶縁体表面に構築する。次に、試料表面の3次元的な交換エネルギー分布を導出できる分光法を開発する。さらに、1次元・2次元・3次元のナノ磁性体における磁気交換相互作用を解明する。最後に、ナノ磁性体を構成する個々の原子間の交換相互作用について検討する。
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