研究課題
原子数個から数十個からなるナノ磁性体は、強い量子サイズ効果を示し、閉じ込められた電子のエネルギー状態とスピン状態は、バルク材料のものとは全く異なる。新しい機能を有するナノ磁性体を思い通りに設計するには、スピン間の交換相互作用の理解が重要である。そこで、本研究は、強磁性共鳴を用いた磁気交換力顕微鏡を駆使して、表面上に構築されたナノ磁性体の原子スケールの交換相互作用を測定し、ナノ構造体を構成する原子数や次元、構造が磁気相互作用にどのように影響するかを解明することを目的とする。まず、磁気交換力顕微鏡(極低温・超高真空動作)の高感度化と高分解能化を実現するため、カンチレバーの変位検出計の低ノイズ化を実現した。具体的には、光源としてコヒーレント長の長い半導体レーザを導入し、低ノイズ化を実現する。また、光出力をフィードバック回路を用いて安定化し、低ノイズ化を実現した。次に、従来のカンチレバーに比べて、ばね定数が大きく、共振周波数の高いカンチレバーを導入し、小振動振幅での安定動作を実現した。この結果、探針・試料間の相互作用時間が長くなり、力の検出感度が一桁以上向上した。また、短距離力に対する感度が向上し、空間分解能も向上した。また、原子操作技術を駆使して、構成原子数の明らかなナノ構造体を絶縁体表面に構築できるようにした。さらに、磁性体探針と磁性体試料の間の距離を変えながら、カンチレバーの周波数シフトの変調成分を3次元的に測定し、数値計算により、交換力および交換エネルギーを導出できるようにした。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、磁気交換力顕微鏡の超高感度化と超高分解能化を実現する様々な要素技術について検討を行った。その結果、まず、カンチレバーの変位検出計の低ノイズ化を実現した。次に、カンチレバーの小振動動作・高周波動作を実現した。また、磁性体探針と磁性体試料の間の距離を変えながら、カンチレバーの周波数シフトの変調成分を3次元的に測定する交換力分光法も開発した。このように、本研究は、おおむね、順調に進展していると判断できる。
今後は、引き続き、原子操作技術を用いて構成原子数の明らかなナノ構造体を絶縁体表面に再現性よく構築できるようにする。次に、1次元・2次元・3次元のナノ磁性体における磁気交換相互作用の解明を目指す。最後に、ナノ磁性体を構成する個々の原子間の交換相互作用について検討する。
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