研究課題/領域番号 |
17H01062
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
粟辻 安浩 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (80293984)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光工学・光量子科学 / 可視化 / ホログラフィー / 光伝播 / 偏光 / 高速度撮影 |
研究実績の概要 |
伝播するフェムト秒光パルスの拡大動画像の記録光学系を設計した.透過軸が0°,45°,90°,135°の4枚の直線偏光フィルムを組み合わせた偏光フィルタアレイを設計した.この偏光フィルタアレイを,ligh-in-flight ホログラフィの記録光学系における参照光パルスの光路中に導入し,参照光パルスに上から順に0°,45°,90°,135°の直線偏光の空間分布を与えられるようにした.このことにより,4方向の偏光成分の干渉縞が縦方向に分割されてホログラフィック乾板に同時記録できる.拡大光学系によって,物体光が記録材料上に到達する範囲は変化することを考慮して,参照光の複数の直線偏光それぞれに物体光が干渉できるように偏光フィルタアレイ幅を5mmと決定した. フェムト秒光パルスの偏光伝播の拡大像を記録するために,乾板の前に導入する拡大光学系を設計した.拡大光学系と記録材料との間の距離が制限されないという設計の自由度を高めるために,虚像を観察できるようにした.拡大光学系として,再生時に虚像を形成し物体の奥行き位置によって拡大率が変化しないアフォーカル系とし,倍率が6となるよう顕微鏡対物レンズと凸レンズを用いた設計とした.この光学系では,従来のlight-in-flightホログラフィの光学系と比べて,観察できる光パルスが伝播する範囲は拡大光学系の射出瞳によって制限され,物体光が記録材料を照らしている時間は短くなる.そのため,再生光を観察しやすくするためには記録時間を短くする必要があった.そこで,記録時間の調整は参照光の入射角度を調整することで行えるように光学系を設計した. 設計した光学系で記録したホログラムを再生する場合,ホログラムの縦方向の観察位置を変えることで0°,45°,90°,135°の4方向の偏光成分ごとの伝播するフェムト秒光パルスの偏光伝播の拡大像の動画像を観察できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題であるフェムト秒光パルスの偏光伝播の顕微動画像記録と観察の基本となるフェムト秒光パルスの偏光伝播の拡大像記録と観察のための光学系の設計が終了した. 以上の成果が得られていることにより,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,平成28年度に設計した光学系を構築し,構築した光学系を用いて,伝播する偏光の様子の拡大動画像記録することの実証を目指す. 設計した光学系では,ホログラムの記録にはホログラフィック乾板を用いる.一般にフェムト秒パルスレーザーは近赤外光の超短光パルスを発する.近赤外光は,ホログラフィック乾板に記録するには感度が非常に低く,このままでは記録が困難である.そこで,可視光のフェムト秒パルス光を発するレーザーをホログラムの記録光源に用いて光学系を構築する.可視光かつ高出力のフェムト秒パルス光を発するレーザーが必要であるために購入する. これまでに,可視光を用いたフェムト秒光パルスの動画像記録において適した中心波長を明らかにするために,構築した光学系において,フェムト秒光パルスの中心波長を変化させて光の伝播の様子を動画像として記録,観察する.観察された動画像を評価することで,効率的かつ効果的に光の伝播する様子を動画像として記録できるフェムト秒光パルスの中心波長を明らかにする. 微小空間を伝播する偏光の様子を動画像記録することを試験する.そのため,偏光特性を有しかつ弱散乱性を有する材料を設定する.記録に十分なエネルギーを持つ物体光パルスを記録材料へ到達させるのに最適な弱散乱立体を設計する.この弱散乱体では,適切な散乱度をもたせるように媒質を設計する.光の偏光状態をその光の位相を含めて一意に同定し定量的に評価できる偏光成分数を決める.また,この実験を通して,構築した光学系の問題点を明らかにする.その問題に対して解決策を講じた後に,偏光伝播の同時動画像記録を行う. 研究協力者としてホログラフィーの記録について高度な知識を持つ(株)久保田ホログラム工房 久保田敏弘博士,神戸大学 的場修教授,千葉大学 角江助教,産業技術総合研究所 夏鵬研究員と議論ならびに助言を受けながら研究を進める.
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