研究課題
初年度は,①波動光学シミュレーションに基づいた光学設計とその性能予測,②新規結像ミラー作製法の検討,③X線結像実験,を実施した.①では,結像光学系の光学設計を進めた.従来法である光線追跡法とFresnel-Kirchhoffの回折理論に基づいたシミュレーションを行うことで,その性能を正確に予想しながら詳細設計を行うことができた.特に,コマ収差,像面湾曲,歪曲収差,ミラー形状誤差起因の波面収差に関する知見を深めることができ,ミラー作製や顕微鏡設計に必要な指針を得ることができた.②では,新規結像ミラーのアライメントが簡単になることを第一優先として,いくつかのミラー作製方法・アッセンブリ方法を提案した.アッセンブリ後に2枚のミラーの相対位置を固定するために,接着に関する実験を行い,実用に耐えることができる接着手法を確立することができた.接着前後でミラー形状やその配置を高精度に測定したところ,接着による影響は顕微鏡性能に影響を与えない程度であることがわかった.③では,デモ実験用に作製した結像ミラーを使ったX線結像実験をSPring-8にて実施した.実際にX線を結像したところ,50nm程度の点広がり関数を確認することができた.これによって,必要な要素技術(アライメント手法,点広がり関数の計測手法,視野サイズ計測,X線波面計測,反射率計測)の確立や結像技術の向上を図ることができた.ミラーアライメントについてはいくつかの課題が得られ,次年度以降に継続してその改善に取り組む.
2: おおむね順調に進展している
計画通りに研究を実施することができた.特に,新規結像ミラーのデモ実験に成功しており,今後はこの性能を向上させることに尽力する.一方で,そのミラーアライメントは,やや熟練度を要求するため,ユーザーが容易に調整できるような結像光学系の構築が必要である.次年度以降にさらに実用的なミラーシステムの開発を行うことで,当該研究を計画以上に飛躍させることを目指している.
次年度以降は,①新規結像ミラー作製法の高度化,②グレイディッド多層膜成膜技術の高度化,③X線顕微鏡実験,④さらに新しい結像光学系の提案 を実施する.①では,引き続きミラー作製法の改良を進める.得られたミラーはX線波面計測法によって評価し,顕微鏡としての正確な性能予測を実施していきたい.②では,多層膜成膜装置の精度検証を進めると共に,その精度向上を図る.また,様々な材料の多層膜を作製し,界面粗さ特性の評価を行う.最適な材料の探索によって,高入射角条件下でも高い反射率を得る多層膜を実現する.③では,①②の完成度を評価するために,SPring-8にてX線結像実験を行う.分解能評価,視野特性評価,長時間の安定性評価などを調査することで性能だけでなく実用性も兼ね備えたシステムの完成を目指す.以上の評価を光学系開発にフィードバックすることで高度な結像光学系の実現を着実に進める.④では,次々世代X線顕微鏡に必要な結像光学系の開発をシミュレーションベースで進める.高分解能だけでなく,コンパクトかつ容易な調整が可能なシステムの実現を目指す.
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 11件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
Proc. SPIE
巻: 10386 ページ: 103860C
doi.org/10.1117/12.2272904
http://www-up.prec.eng.osaka-u.ac.jp/
http://www-up.prec.eng.osaka-u.ac.jp/matsuyama/index.html