研究課題
2019年度は引き続き,①新規結像光学系の実証,②グレイディッド多層膜成膜技術の高度化,③X線実験,④新しい光学系の検討 を実施した.①では,複数のミラーを高精度にアライメントできる手法を確立するために,X線波面計測を用いたアライメントモニターを検討した.波面計測法として1枚の回折格子から成るグレーチング干渉計を構築した.実験の結果,アライメント誤差はコマ収差として波面収差上に現れ,これ手掛かりに高精度なアライメントを実施することができた.アライメント後に残る収差はミラー上に残る形状誤差と理解でき,形状誤差の精密計測も実施できた.②では,多層膜成膜装置の精度検証を進めると共に,その精度向上を図った.また,様々な材料の多層膜を作製し,界面粗さ特性の評価を行った.特に,重元素と軽元素の比を最適化することで界面粗さの低減を図ることができた.③では,①②の完成度を評価するために,SPring-8のBL29XULにてX線結像実験を行った.タンタル製のテストチャート像を拡大結像することでその分解能や視野特性を評価した.実験の結果,約30nmの線幅を解像することができた.視野特性についてはおおむね予想通りの結果を得た.また,ミラー配置は長時間安定に維持することができ,実用的な顕微鏡を構築することができた.本顕微鏡を使ってイメージングXAFSを実施したところ,吸収スペクトルを内包した2Dイメージを得ることができた.④では,アライメント問題を解決できる新しい結像光学系の設計・シミュレーションを行った.実用的な設計が可能であって,意図した性能を発揮することを確認した.
2: おおむね順調に進展している
ミラー作製,ミラーアライメント,多層膜成膜,顕微鏡構築を進めることができ,計画は順調に進んでいる.
今後は,SPring-8における性能評価実験とミラーマニピュレータの改造,高精度形状可変ミラーの導入などを進め,顕微鏡の更なる高精度化を進める.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 11件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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