研究課題/領域番号 |
17H01075
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
加藤 政博 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 教授 (30185871)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射光 / 光渦 / 角運動量 / 真空紫外線 / 紫外線 / ベクトルビーム / 偏光 / アンジュレータ |
研究実績の概要 |
円偏光に対応するスピン角運動量以外に軌道角運動量を運ぶ光が存在する。我々は光渦と呼ばれるこの特異な光が放射光の技術により紫外・真空紫外領域で発生できることを実証し、またそのメカニズムを世界に先駆けて解明した。本研究では、渦放射光ビーム同士の合成によるベクトル放射光ビームの発生など、広い意味での渦放射光ビームの発生技術の高度化とその特性評価を世界に先駆けて進める。並行して、その利用へ向けて、集光・分光など未開拓の渦放射光ビーム輸送技術の開発を進める。これらの技術を用いて、幅広い分野の研究者と協力し、紫外・真空紫外光領域の渦放射光ビームと物質系との相互作用という未踏の研究領域の開拓に挑戦する。 平成29年度は、渦放射光の研究で世界的にも抜きんでた競争力を有する分子科学研究所のシンクロトロン光源UVSORと光源開発専用ビームラインBL1Uを活用し、渦放射光発生技術の高度化、渦放射光の詳細な特性評価、渦放射光の特性を損なわない輸送技術の確立、渦放射光利用法の探索、の4つの課題に取り組んできた。渦放射光発生技術の高度化に関しては、2台の円偏光アンジュレータで発生した偏光方向及び渦の次数の異なる渦光を合成し、偏光が光軸のまわりで変化する偏光渦を作り出す実験を最優先で進め、その結果、世界に先駆けてシンクロトロンからのベクトルビームの発生に成功した。本成果は現在論文執筆中である。渦放射光の詳細な特性評価については、特に、高次の渦光の位相分布が理想的な場合からずれていることを示すデータを得ており、その原因を理論・実験両面から探ってきた。渦放射光の特性を損なわない輸送技術については、平成29年度は集光系及び回折格子通過後の渦性の検証の実験を進めてきた。実験結果については現在解析中である。また、いくつかの標準的な試料を用いた渦二色性の検証実験にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究そのものは概ね順調に進んでいるが、予定していた年度後半からの博士研究員の雇用において適任者を見つけることができず、マンパワーがやや不足している。幸い、大学その他からの協力を得ることができ、これまでのところ深刻な事態とはなっていない。引き続きよい候補者を探す努力を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
研究そのものは順調に進行している。今後も世界的にも唯一といってよい研究環境を活かして、先導的な研究を進める。加速器・放射光分野での学生・若手研究者の不足により、博士研究員の適任者を探すことが困難な状況が今後も予想されるため、今後も継続して大学等へ協力を求め、マンパワー不足の解消に努める。このために人件費を教員や学生などの実験参加のための旅費やそのための実験経費に充当する。
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