研究課題/領域番号 |
17H01076
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
藤 暢輔 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (60354734)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 即発ガンマ線分析 / 飛行時間法 / 中性子フィルター / 中性子共鳴透過分析 / 中性子共鳴捕獲分析 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、大強度陽子加速器施設(J-PARC)物質・生命科学実験施設(MLF)に設置した中性子核反応測定装置(ANNRI)を用いて非破壊元素分析法の研究開発を実施している。非破壊元素分析は、試料を再利用することができ、迅速で簡単に結果が得られるなどの利点があるため、破壊分析がためらわれる希少な試料や破壊分析が困難な試料などを分析する際に非常に有効な分析手法として知られている。即発ガンマ線分析(PGA)は、中性子が捕獲される際に放出されるガンマ線のエネルギーとその強度を測定する事によって元素の種類と含有量を知ることができる非破壊分析法である。中性子共鳴捕獲分析(NRCA)は、共鳴反応を利用した手法であり、飛行時間法(TOF)によって中性子のエネルギーを決定する。ANNRIでは、このPGAとNRCA(TOF)を組み合わせた分析手法である飛行時間法を用いた即発ガンマ線分析法(TOF-PGA)を実施することができる。これらの分析手法に対して中性子フィルターを適用し、さらに中性子遮蔽の強化や専用の解析ソフト、データベース、補正法等を開発することよって高度化された非破壊分析手法の確立を目指している。 本年度は、PGAおよびNRCAの標準試料作成に加えて、中性子共鳴透過分析(NRTA)の標準試料作成と、フォーク型の格子構造を持つ中性子フィルター5個の製作を行った。また、これまでに作成した標準試料と中性子フィルターを用いてANNRIにおいて実験を行った。さらに、専用の解析ソフト、ガンマ線や中性子共鳴に係るデータベース、定量値を得るために必要となる自己遮蔽効果などの補正法の開発を継続し、ANNRIで得られたTOF-PGA及びNRTAの実験データ解析に用いる事ができることを確かめた。測定の不確かさは十分に小さいことが確かめられ、特にNRTAにおいて1%以下を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に製作した冷から熱外領域程度までをカバーするフォーク型の中性子フィルター(I=1の正対及び反転)に加え、本年度はI=0(ブランク)及びI=2の正対及び反転、さらにより高スピンの中性子フィルターとしてI=3の正対及び反転を製作した。標準試料としては、適当なエネルギー領域に共鳴を持つ、イリジウム、金、銀、コバルト、ニッケル、タンタルの試料を作成した。これらに加えて前年度までに作成した標準試料も用いてJ-PARC ANNRIにて実験を行った。実験では、クラスターGe検出器2台のほか、同軸型Ge検出器8台と用いてTOF-PGA測定を行ったほか、透過型のLi-glass検出器を用いてNRTA測定も実施した。また、これらの実験は開発したソフトにより、TOF-PGA測定とNRTA測定の同時測定を試料交換、データ収集及びオンライン解析まで完全自動で実施することができるようになった。実験で得られたデータを解析し、特にフォーク型の中性子フィルターを用いたNRTA測定においては、繰り返しによる測定の不確かさがすべての試料で1%以下となり、精度の高い測定が可能であることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度までに開発した中性子フィルターと作成した標準試料等を用いて、ANNRIにおけるTOF-PGA実験、中性子共鳴透過実験を行う。特にR1年度に開発した高スピン中性子フィルターを用いた実験を重点的に実施する。解析ソフト及びデータベース等の開発と改良を継続し、完成させる。また、標準試料を用いて精度などを評価する。さらに、難測定放射性核種の模擬試料もしくは難測定放射性核種であるTc-99、Pd-107を用いた実験も行う予定である。
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