研究課題/領域番号 |
17H01078
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
岸本 俊二 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00195231)
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研究分担者 |
田中 真伸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (00222117)
春木 理恵 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (30404031)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マルチチャンネル・スケーリング / ナノ秒時間分解イメージング / 原子核共鳴散乱 / 鉄57原子核 |
研究実績の概要 |
(1)H29に製作した128チャンネル・厚さ30μmのSi-APDリニアアレイ(ピクセルサイズ:100x200,および100x400μm)を最短0.5nsごとに最長1μsの連続計数ができるマルチチャンネル・スケーラ(MCS)システムボードを製作して、各ピクセルからの高速信号を処理し時間スペクトルを測定することに成功した。また電荷感応型前置増幅器を使って測定するための回路基板を用意してピクセルごとのX線検出効率や波高分布も測定した。その結果として14.4keV(Fe-57原子核の第1励起準位)のX線に対して検出効率6.5%が得られた。これは設計値30μmに近い25μmの空乏層厚さに相当し、時間分解能(FWHM)も空乏層厚さの増加の影響はなく0.5~0.6nsが得られた。6keVまでの高速パルス信号を計数できるように、既存の128ch-MCSシステムボードで課題だったノイズレベルを低下させることもできたと考えるが、定量的な評価を行うためのソフトウェア改良は次年度の課題である。 (2)(1)のMCSシステムおよび既存のMCSボードも使ってナノ秒領域での時間スペクトル測定への応用・ナノ秒時間分解イメージングを推進できた。Fe-57原子核を含むFeBO3結晶の原子核ブラッグ反射の空間イメージングと同時に核放射線が減衰する様子を記録することに成功した。内部転換電子線の検出を含む放射光原子核共鳴散乱への応用や大型X線干渉計による高感度イメージング法と組み合わせた物質のサブナノ秒密度変化を可視化する測定を試みることも行った。 (3)超高速ASICアンプの試作を行った。 (4)高エネルギーX線検出のため重元素添加プラスチック・シンチレータ(PLS)開発ではビスマス添加PLSのテスト測定を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しくマルチチャンネル・スケーラ(MCS)システムボードを製作して時間分解能を損なわずに検出効率を3倍に向上させることに成功したこと、低ノイズ化により10keV以下の放射線検出が可能になったことは、Si-APDリニアアレイ検出器の高性能化という本研究課題の目標に沿った成果である。さらに既存のSi-APDリニアアレイ検出器と合わせてナノ秒時間分解能によるX線時間分解イメージング測定が実現できつつある。これも本研究課題に沿った成果である。さらなる高性能化のためのASICアンプの製作は試作ができた段階であるが前進させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
高性能化を進めたSi-APDリニアアレイ検出器システムを使ってX線時間分解イメージングへの応用を一層進める。放射光核共鳴散乱実験および大型X線干渉計による高感度イメージング法と組み合わせた測定での成果をめざす。 超高速ASICアンプは今後、評価を行いシステム改良および高エネルギーX線領域用Si-APDシンチレーション検出器にも応用できるようにする。 Si-APDシンチレーション検出器はビスマス添加PLSを改良しながら70keV以上の高エネルギー領域での測定を進める。
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備考 |
(1)はKEK測定器開発室(DTP)ホームページ内のFPIXプロジェクトのページを示す。KEK-DTPプロジェクトとしてFPIXプロジェクトは終了したが引き続き成果については追記予定。 (2)はKEK測定器開発室(DTP)ホームページ内のFSCIプロジェクトのページを示す。
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