研究課題/領域番号 |
17H01093
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90234509)
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研究分担者 |
相川 弘明 中部大学, 工学部, 教授 (20137889)
日野 正訓 京都大学, 理学研究科, 教授 (40303888)
舟木 直久 早稲田大学, 理工学術院, 特任教授 (60112174)
福島 竜輝 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (60527886)
木上 淳 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90202035)
Croydon David 京都大学, 情報学研究科, 特定准教授 (50824182)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 確率論 / 複雑系 / 数理物理 / 解析学 / ポテンシャル論 / 統計力学 |
研究実績の概要 |
1。熊谷とCroydonは、trapモデルのスケール極限で現れるFIN過程の詳細な熱核評価をquenchedとannealedの両方の場合に行った。この結果はB.M. Hambly氏との共著にまとめ、雑誌に掲載された。熊谷はまた、長距離の飛躍を許すようなランダム媒質(ランダムコンダクタンス)上のランダムウォークの漸近挙動を解析し、対応するランダムウォークのquenchedのスケール極限を解明し、さらにランダムウォークの熱核の精密な評価を導出した。この結果は、X. Chen氏とJ. Wang氏との共著論文にまとめ、雑誌に投稿中である。 2。木上は、Dirichlet formの与えられた距離・測度空間列において、monotonicity という条件があればその射影極限上に Dirichlet form の列の自然な極限として Dirichlet form が構成でき、また対応する自己共役作用素のスペクトルが適当な意味で収束することを示した。日野は、自己相似フラクタルの典型例である2次元シルピンスキーガスケットにおいて、楠岡測度を底測度とする熱核の局所スペクトル次元の定量評価について研究を行った。行列のランダム積の理論を用いて、数式処理システムを援用することにより、従前に比べて高い精度の近似値を与えた。 3。相川は、複雑領域のDirichlet最小固有値と、その複雑領域をベースに持つシリンダー上の熱方程式の正値優解の大域可積分性との関連を調べた。 4。福島は、A. Ramirez氏と共同でランダム媒質中のランダムウォークの速度が非退化になる条件について研究を行い、空間次元が4以上で媒質の影響が小さい時に新しい十分条件を見出した。舟木は、相互作用粒子系から平均曲率運動、Stefan自由境界問題、発散項を含む特異な確率偏微分方程式である多成分KPZ方程式などの導出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複雑な系の上で、確率論的手法と実解析的手法を融合させることにより汎用性の高い手法を編み出し、広い範疇で複雑な系の上の拡散過程・飛躍型過程の異常拡散現象を解析するという中心課題については、上述したようにFIN過程などtrapモデルのスケール極限として現れ、応用上も重要なモデルの熱核に関する詳細な評価を得ることで、異常拡散現象が生じるメカニズムを明らかにし、さらに距離の飛躍を許すようなランダム媒質上のランダムウォークのスケール極限の導出に成功し、当該研究を論文にまとめ雑誌に投稿するなど、研究成果が目に見える形になった。代表者や分担者は今年度も国内外での多くの研究集会に招待され、上述した対称確率過程の研究の他、長距離飛躍を許す確率過程のhomogenization(均質化)の研究など、偏微分方程式をはじめとする様々な分野と関わる研究が高く評価されている。研究代表者はフンボルト賞受賞の関係でドイツに中期間滞在でき、研究を大きく推進することができた。次年度もさらに研究内容を深めて行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な方策はこれまで通りであるが、この報告書を作成している2020年4月現在(繰越を行ったために報告書の作成が一年ずれている)コロナウイルス の影響で前半期のほぼ全ての研究集会が延期または中止に追い込まれており、当面はこれまでのような海外渡航、現地訪問による研究打ち合わせができなくなっている。これまでのつながりを継続していくために積極的にオンラインを活用し、Zoom等を用いたオンラインでの議論を深めていく。オンラインによる国際研究集会も徐々に整備されつつあるのでこれらに参加し、最新の情報の収集を行い、研究の推進を目指す。 これまでにある程度進めていた研究については、自宅にいる時間が長くなったこの機会に共同研究者達と連絡を取りながら論文の形にまとめ上げ、目に見える形での成果に仕上げていく。 オンラインでの研究集会やセミナーについては、特に若手が講演する機会が減る可能性があるので、代表者・分担者自身が積極的にこれらを主宰し、若手がコミュニティに加わる機会を増やせるよう努めて行きたい。
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