研究課題/領域番号 |
17H01095
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
柳田 英二 東京工業大学, 理学院, 教授 (80174548)
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研究分担者 |
石渡 通徳 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (30350458)
赤木 剛朗 東北大学, 理学研究科, 教授 (60360202)
佐野 めぐみ 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (70834935)
田中 敏 東北大学, 理学研究科, 教授 (90331959)
若狭 徹 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20454069)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 楕円型方程式 / 放物型方程式 / 非線形 / 特異性 / 変分問題 / 分数ブラウン運動 / 臨界指数 |
研究実績の概要 |
2020年度は、非線形楕円型偏微分方程式の解の構造の解明,線形あるいは半線系の放物型偏微分方程式の解の特異性の解明を中心に研究を行った.
楕円型偏微分方程式に関しては,まず円環領域における楕円型方程式の正値球対称解の一意性について研究を深化させた.もとの方程式の解と線形化方程式の解によるある恒等式の改良を行い,そこに現れる比較関数を巧妙に選ぶことにより, あらたな結果を導くことに成功した.また,改良型Hardy不等式及びSobolev不等式の最良定数に付随する最小化問題の非球対称な最小化関数の存在と、Sobolev不等式の次元無限大形について研究を行った.さらにHardy型不等式やポワンカレ不等式の極限形を導出する研究と、非等方な量を持つFinsler Hardy不等式に関する研究も行った.
放物型偏微分方程式に関しては,まずFinsler ラプラシアンを主要部に持つ非線形熱方程式の初期値問題に対する解の存在を考え, 初期値の空間遠方での増大度に関する必要十分条件や時間局所解の存在時間について考察した.次にネットワーク上におけるChafee-Infante問題についての研究を進めた.この問題では2次分岐定常解が存在することが知られている. 非線形項を3次関数としたとき,現れる2次分岐解の非退化性を調べるための条件を楕円関数およびその積分を用いて表したが, これを解析するためには主に表示式の複雑さに起因する困難点があり継続して研究を進めることとした.さらに有界かつ非コンパクト性な軌道をもつ特異かつ変換群不変な力学系に対するラサールの不変原理の拡張と、その半線型放物型方程式への応用を行い,方程式の時間大域解は定常解をプロファイルとする擬進行波の有限個の重ね合わせに漸近することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各課題について順調に研究が進展した.楕円型方程式については、正値球対称解の一意性の結果を改良し,またHardy 不等式の一般化などについて進展があった.放物型方程式については、ネットワーク上の問題などについて進展があり,解決すべき課題が明らかになった.熱方程式における特異点の挙動と解の性質について新たな発見があり,今後の発展が期待される.
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今後の研究の推進方策 |
楕円型方程式については,円環領域や多様体上の解の対称性と一意性に関する研究を深化させる.特に,球対称解の分類と漸近形状,空間大域解の構造についてより詳細な性質を明らかにする.また,この問題に関連して,Hardy不等式とSobolev不等式の一般化を探るとともに,これらを統一した形の不等式の構成について考察する.さらには,楕円形方程式の解の構造と対応する変分問題および放物型方程式のダイナミクスの関係について明らかにする.
放物型偏微分方程式については、ネットワーク上で定義された方程式に対し,定常解の構造とその安定性に関する研究の完成を目指すとともに、反応項との相互作用による現象の記述と解析手法の確立する.また、分数冪ラプラス作用素や非整数階時間微分を含む問題や,対数拡散項を含む非線形問題の解の構造を線形拡散方程式との違いを意識して調べ、その解析手法の確立と詳細な非線形構造の解析手法の確率を図る.また、特異点が不規則に動く場合について,Hardy型ポテンシャルを持つ放物型方程式における特異解の存在と構造の問題、非線形拡散方程式における動的特異点の存在とその性質の解明を進める.特に、特異ポテンシャル項を含む方程式系の解の存在,漸近的対称性,負のポテンシャル項を持つ場合の解の正値性などに着目して,臨界指数のもつ役割についての研究を進める.
このほか、これまでにやり残した研究について検討を進め、今後の研究の方向を定める.
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