研究課題/領域番号 |
17H01105
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 建 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80431782)
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研究分担者 |
小林 浩 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (40422761)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 原始惑星系円盤 / 円盤風 / 原始惑星 / 磁場 / 原始星 / 乱流 / j |
研究実績の概要 |
2018年度、及び、繰越後の2019年度上半期までに、以下の研究成果を得た。 2017年度から引き続き、原始惑星系円盤進化と惑星形成に与える、磁気駆動円盤風の役割の研究に取り組んだ。この期間の大きな成果は、円盤風により中心星に近い軌道を周回する岩石惑星が自然に形成されることを、N体計算により示したことである(Ogihara et al.2018)。該当論文は、出版後2年を経過していない段階であるが、既に20を超える引用数があり、世界的にも注目されつつある。 また、磁気拡散を考慮した原始惑星系円盤の大局的な磁気流体シミュレーションを行い、磁気拡散効果により円盤にリングーギャップの縞構造が作られることが分かった(Suriano et al.2019)。この研究結果を観測と直接比較するため、2019年度以降の研究で塵の効果を導入した上で、輻射輸送計算に取り組んでいる。 他にも、原始星と星周円盤の間の磁場の相互作用、特に磁力線のつなぎ替えにより、原始星の巨大フレアの発生機構も精査した(Takasao et al.2019)。 関連研究としては、銀河中心部の磁気活動に関する研究課題(Kakiuchi et al.2018)、低/ゼロ金属量星の恒星風と重元素汚染に関する研究課題(Suzuki 2018 および Tanikawa et al.2018)、太陽風の大規模3次元磁気流体シミュレーション(Shoda et al.2019)にも取り組んだ。 これらの研究成果を、国際会議における2件の招待講演で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費で雇用する研究員の入れ替え(異動と応募による新任の着任)のタイムラグの ため、2018年度の経費を繰り越すこととなったら、研究の進捗はほぼ順調である。 磁気拡散の効果に関する調査は、当初の計画よりも早く進捗している一方で、固体塵粒子の衝突合体の素過程の調査は当初の計画よりも若干遅れている。これら2つを総合的に判断し、「おおむね順調に進展している。」ことと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
第一の計画は,2019年度から引き続き、観測との直接比較のため数値シミュレーションから疑似観測データを作成することである。大局的な原始惑星系円盤の磁気流体シミュレーションの数値データ(Suriano et al.2019)に輻射輸送計算を適用し、疑似観測画像を作成する。特に数値データで確認された縞構造に起因する濃淡のある円盤風が、観測からどのように特定されるかに焦点を当て、研究を進める。 第二の計画は、原始惑星系円盤中の固体微粒子の衝突合体成長と破壊に関する研究である。共同研究者である田中秀和氏(東北大学)らとともに、固体塵粒子の衝突シミュレーションを行い、特に衝突体同士の質量比が1:1でない場合の、衝突時の動力学と固体成長の基本的性質の理解を目指す。 第三の計画は、ガス円盤中での固体の長時間進化に関する研究である。第二の計画とは対照的に、動径方向一次元の解析的な理論モデルにより、百万年を超える長時間の固体成長を計算する。 第四の計画は、円盤の一部分を高解像する数値実験手法の開発である。これまでの手法では、円盤の丸みを無視しデカルト座標で計算が行われていた。本計画では、曲率を考慮した円柱座標での局所計算の枠組みを開発し、従来の手法では扱えなかった質量降着を直接扱える手法を開発する。
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