研究課題/領域番号 |
17H01105
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 建 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80431782)
|
研究分担者 |
小林 浩 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (40422761)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 原始惑星系円盤 / 円盤風 / 原始惑星 / 磁場 / 原始星 / 乱流 / 光蒸発 |
研究実績の概要 |
2020年度は主に、原始惑星系円盤での固体成分の成長に関する研究に取り組んだ。まず、磁気駆動円盤風を考慮した円盤進化における塵粒子の集積と合体成長過程を、本科研費で特任研究員として雇用していた瀧氏(現在国立天文台)が中心となり調査した(Taki et al.2021)。そして円盤風の効果が顕著な場合、1-数au付近で面密度が中心原始星から離れるとともに増加するという、通常とは逆の依存性となる結果、塵粒子が集積し急速に成長することを見出した。この急速成長は細いリンブ状の場所で起きるため、その後の惑星形成にも多大なる影響を与えることが予想される。 また、固体成分の成長過程の詳細をさらに精査するため、塵粒子の合体成長の数値実験に本科研費の特任研究員である長谷川氏と研究分担者の小林氏が中心となり取り組んだ(Hasegawa et al.2021)。ここで得られた重要な成果は、合体する塵粒子の質量比が1:1でない場合に、大きい側から小さい側へと質量が輸送される広いパラメーター領域が存在することを見出したことである。この領域は、大きな塵粒子の合体成長を実質的に抑制するためその後の惑星形成を遅らせる可能性がある一方、大きな塵粒子の大きさを均一化させる効果もあることが重要な点である。 上記の固体成分に関する研究の他に、前年度から引き続き原始惑星系円盤のガス成分の進化に関する研究にも継続して取り組んでいる。これまであまり研究されてこなかった、太陽よりも質量が若干大きな中質量の原始星注意の円盤ガスの進化の計算も行った。そして、異なる波長における中心星の放射の時間変化が、光蒸発による円盤ガスの散逸に大きく影響することが分かった(Kunitomo et al.2021)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は世界的なCovid-19の流行に大きく影響を受けた年であった。本科研費の特任研究員(2020年3月まで)であったScott SURIANO氏が、JSPS外国人特別研究員の任期を大幅に残したまま2020年7月に米国の家族の元に戻り、彼を中心に行っている研究課題が大きく遅れる状況となった。この研究では、原始惑星系円盤からの磁気駆動円盤風を考慮した3次元数値実験結果(Suriano et al. 2019)を用いて疑似観測画像を作成し、実際の観測結果と比較することにより実際の物理機構を理解することを目標としており、次年度以降に継続して取り組んでいる。 それ以外の研究課題(i)原始惑星系円盤での固体成分の合体成長と(ii)円盤ガス成分に関しては、前述の「研究実績の概要」にまとめた通り、着実に研究成果を発表しており十分に進捗させられた。一方で国際会議が軒並み中止や延期になったことで、研究成果の発表・宣伝は次年度以降の課題として残されている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降に推進させる研究課題を列記する。 (i) 原始惑星系円盤からの磁気駆動円盤風を考慮した3次元数値実験結果を用いた疑似観測画像の作成と、観測との比較(詳細は前項目参照)。SURIANO氏が中心となり、現在研究結果をまとめる段階にあり、2022年度中に査読論文として発表できる見込みである。 (ii) 数値実験による、塵粒子同士の合体成長過程の理解。長谷川氏と小林氏が中心となり、一本目の論文(Hasegawa et al.2021)で解析し切れていなかった衝突時に生成される破片の質量分布に関する結果を論文として発表する。さらに発表論文では扱えていなかったシリケイト系塵粒子の計算を進める。 (iii)様々な質量の原始星周囲の原始惑星系円盤の計算を進め、円盤の時間進化の中心星質量依存性を調査する。この研究課題は、研究代表者の鈴木と研究室所属の大学院生が中心となり進める。
|