研究実績の概要 |
前年度までに実行した宇宙論的銀河形成シミュレーションの結果を用いて、主に科学的成果を刈り取り、論文にまとめて出版する作業を行なった。我々のSPHコードGADGET3-Osakaコードには、星形成・超新星フィードバックモデル、化学進化モデル、ダストの形成破壊モデルなどが実装されている。宇宙におけるダークマターと中性水素分布については幾つかの論文にその理論的研究結果が出版され(Ando et al. 2021; Momose et al. 2021a; Sinigaglia et al. 2021, 2022; Nagamine et al. 2022)、銀河周辺のLya吸収の度合いに銀河の星質量や種族への依存性があることを明らかにした。これはダークマターに対するバリオン分布のバイアスとして特徴づけられ、我々は電離水素分布を活用することによって、より非線形な波数領域までバイアスモデルを拡張して、機械学習を活用することで非常に高速にバリオン分布を再現できることを示した。同時に、銀河周辺の中性水素分布に関する観測との比較も詳細に行われた(Mukae et al. 2020; Liang et al. 2021; Momose et al. 2021b,c)。特に重たい銀河の周辺にはより多くの中性水素が集積していて、フィードバックモデルによる影響が30%ほどあることがわかった。一方、Lya emitterの観測は散乱・吸収に影響を受けるため、Mpcスケールの中性水素分布にも影響を受ける可能性を指摘した。さらに、本研究によって開発した超新星爆発フィードバックモデルをベースにAGORAコード比較プロジェクトにも参画し、さまざまなコードにおける比較検討結果を宇宙論的ズーム計算でも行なって出版した(Roca-Fabrega et al. 2021)。
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