研究課題
本年度はVERAに搭載するFRB探査システムを開発するため、ソフトウェア・ハードウェア両面での整備を進めた。まずハードウェアについては、VERAのプロジェクト観測中に相乗りでFRB探査データが取得できるよう、高速サンプラーOCTADを購入し、その性能チェックを進めた。また、観測データをリアルタイムで処理し記録するためのデータ処理・保存用PCシステム(VS-REC)の整備を進めた。これによって、VERAのS帯受信機からの信号をデジタル化して記録しつつリアルタイムで信号処理するシステム構築において、鍵となるコンポネントがそろった。一方、ソフトウェア開発においては、VERAの観測生データ(天体からの信号をデジタル化した時系列電圧データ)を読み込んでフーリエ変換して時系列ダイナミックスペクトルを取得するソフトを整備し、データ処理に必要な一連の動作ができるようになった。このソフトウェアの性能確認のため、300MHz帯でのパルサー試験観測データを用いて、パルサーからのGiant Radio Pulseが検出できることを確認した。さらに、実際にVERAのSバンド受信機を用いてCrabパルサーの試験観測を行って上記ソフトウェアの動作を確認するデータを取得し、VERAの実データに基づいてCrabパルサーのGiant Radio Pulseの探査を行った。この観測・解析からVERAの望遠鏡を用いて初めてGiant Radio Pulseの検出に成功した。この検出によって、ソフトウェアがFRB探査用として正しく動作すること、また、VERAのS帯でパルサーのGiant Radio Pulseの観測が可能なことが実証された。また、これらの活動に並行してCrabパルサーのGiant Radio Pulse探査や他波長観測、さらに電波天文における信号処理法などに関する研究成果を出版した。
2: おおむね順調に進展している
計画当初より年度中の整備を予定していたハードウェアとして、高速サンプラーOCTADの調達とデータ処理・記録用計算機の整備を進めた。また、VERAの出力データをダイナミックスペクトルに変換して電波バーストを探査するためのソフトウェア開発の第一版が完成し、Fast Radio Burst探査ソフトウェアの鍵となる機能が獲得できた。さらに、VERAを用いた試験観測データを用いてソフトの動作を確認し、実天体からの電波バースト(CrabパルサーのGiant Radio Pulse)の検出に成功した。これらの成果から、システムの整備と試験が着実に進んでおり、今年度の進捗は概ね順調であると判断する。
H30年度は、これまでに導入したハードウェア、ソフトウェアを組み合わせた総合試験を行うとともに、リアルタイムの処理についても確立を目指す。そして、完成次第VERAの実機に搭載して試験を行い、相乗り観測において自動的にFRBイベントを検出できるようなシステムとして完成させることを目指す。また、開発したソフトウェアをVERAだけなく国内の他の電波望遠鏡へ展開することも検討し、パルサーやFRB研究をさらに拡大することも検討する。そして、H31年度以降VERAを用いたFRBの相乗り探査の実運用を目指す。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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