ニュートリノのマヨラナ性の検証は、素粒子物理学および宇宙物理学の最重要課題の一つであり、現在唯一可能な検証手段であるニュートリノの放出を伴わない2重ベータ崩壊(0νββ)の探索が世界各地で進行中である。カムランド禅実験は大量のキセノン136Xe核を用いた0νββ探索を行い、申請者による基盤研究S(課題番号25220704)では、得られたデータの解析により世界最高感度を達成し、検出器外水槽の再建を行いキセノン倍増(750kg)による新たな探索フェーズ(Zen800)を目指して研究を進めた。本研究は、これを受け検出器の要であるキセノン含有液体シンチレータを保持するクリーンかつ体積を倍増した新型ミニバルーンを建設導入し、0νββ発見に世界に先駆けて迫ることを目指す4年間の計画研究である。 本年度は研究の最終年度である。以下その成果について述べる。クリーンな新型ミニバルーン導入による高品質のデータ採取は順調に継続し、前年度に続き解析プログラムの改良(特に宇宙線ミュー粒子で生成される放射性炭素10Cおよびキセノン破砕核の崩壊事象の除去、ニューラルネットワークや波形解析によるガンマ線の識別による背景事象の除去)を行うとともに、光センサーの劣化によるエネルギー分解能低下の対策として、アンプ導入、エネルギー再構成のための解析手法の工夫などを行った。新型ミニバルーン導入前のデータ(Zen400)とあわせて最終的な解析結果をまもなく論文として発表する予定であるが、探索感度は有効ニュートリノ質量で世界に先駆けて逆階層領域へ踏み出すことが期待される。さらに新たなエネルギー分解能向上と背景事象除去のための開発研究として集光ミラー装置の製作、発光性バルーンによる背景事象識別、ステレオ画像情報の事象パターンによるガンマ線識別などを進めた。
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