研究課題
昨年に引き続き、これまでに米国ジェファーソン研究所で収集したハイパー核実験データの解析を進めるとともに、JLabで進めている次世代ハイパー核電磁分光実験のセットアップの最適化、および必要となる検出器の開発を行った。我々が国内で設計、製作しJLabに設置した高分解能K中間子検出器(HKS)とJlab Hall-A実験室常設の高分解能検出器 HRS に加え、新たに正負荷電粒子を分離するセプタム電磁石を導入することにより4.5GeVまで入射電子エネルギーを上げることが可能となる。これにより制動放射、メラー散乱におる背景雑音をより前方にブーストし、検出器のアクセプタンス外に追いやることができる。このため電磁相互作用に起因する背景雑音を圧倒的に減らすことが可能となる。昨年までは、APEX実験用セプタム実験を改造することでハイパー核実験に用いるセプタム電磁石として実験に供する予定であった。しかし、東北大学を中心とする国際共同研究グループが、新たな対荷電粒子分離電磁石をハイパー核実験用に製作することが新たに決まった。ハイパー核研究とは直接的には関係のない実験用磁石であるAPEX磁石を改造するよりも、ハイパー核実験用対荷電粒子分離電磁石をベース部品として使うことで、より実験に最適化したシステムを構築することが可能となった。このため、今年度はこの対荷電粒子分離電磁石に取り付ける追加部品(アタッチメント)を設計、製作することにより本研究用の電磁石へと組み上げた。また、マインツ大学においては電子ビームエネルギー精密測定技術に関する基礎研究、東北大学電子光理学研究センターにおいては軽いハイパー核の寿命測定実験、ストレンジネス電磁生成に関する検出器の開発、予備実験を開始した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予算不足のために、本来ハイパー核実験には最適化されていないAPEX電磁石を用いて実験を進める予定であったが、東北大学を中心とする国際共同研究グループがジェファーソン研究所におけるハイパー核電磁生成分光に特化したセプタム電磁石を新たに設計、製作することになり、本研究でもより最適化された研究が展開できる見込みとなった。この新規に製作された電磁石に、本研究で必要となる追加部品(アタッチメント)を設計、製作しこの電磁石に組み入れることができた。国内における励磁テストの後、令和2年度には米国に輸出を行い現地において調整作業を行う予定であり、令和元年度に予定していた当初の計画以上に計画は進展していたと言える。ただし、令和2年2月に米国、3月にドイツへの出張を行った後、COVID-19のため海外出張が不可能となったことがこの後の研究に対する懸案事項となっている。
令和2年度はこれまでに米国ジェファーソン研究所(JLab)で収集したハイパー核実験データの解析を進め、物理的結果を得るとともに、これまで進めてきた次世代ハイパー核実験を遂行する予定である。我々が国内で設計、製作しJLabに設置した高分解能K中間子検出器(HKS)とJlab Hall-A実験室常設の高分解能検出器 HRS に加え、新たに正負荷電粒子を分離するセプタム電磁石を導入することにより4.5GeVまで入射電子エネルギーを上げることが可能となる。これにより制動放射、メラー散乱におる背景雑音をより前方にブーストし、検出器のアクセプタンス外に追いやることができる。このため電磁相互作用に起因する背景雑音を圧倒的に減らすことが可能となる。ハイパー核精密分光用対荷電粒子分離電磁石に昨年度製作した追加部品(アタッチメント)を組み合わせ完成した本研究用の電磁石を用いて、米国ジェファーソン研究所における次世代ハイパー核実験のデータ収集を遂行する。また、マインツ大学においてはアンジュレータを用いた電子ビームエネルギー精密測定実験を遂行し、三重水素Λハイパー核の束縛エネルギーを精密測定するための基礎技術を確立する。さらに、東北大学電子光理学研究センターにおいては軽いハイパー核生成実験、ストレンジネス電磁生成実験に関して必要な検出器を開発する。得られた実験結果をもとに理論家との議論を深め、ハイペロンパズルの解決に向けたバリオン力に関してどのような情報が得られたか、研究の到達点を見極め、今後のさらなる発展に向けた研究戦略を確立する。最大の懸案事項は今後、COVID-19の影響がどの程度になるかの予想がつかないことであり、出張が不可能になった場合には、TV会議システム等を駆使して米国、ドイツとの情報交換を行い、国内の研究施設である東北大ELPHにおいて推進できる研究を優先して実施する予定である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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