研究課題/領域番号 |
17H01122
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中條 達也 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70418622)
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研究分担者 |
三明 康郎 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10157422)
稲葉 基 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (80352566)
杉立 徹 広島大学, 理学研究科, 教授 (80144806)
下村 真弥 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (70555416)
大山 健 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (10749047)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クォーク・グルーオン・プラズマ / LHC 加速器 / ALICE 実験 / 高エネルギー重イオン衝突 / ジェット / 前方物理 / シリコン・タングステン電磁カロリメータ |
研究実績の概要 |
陽子-陽子衝突 5.02 TeV における荷電ジェット測定に関して、投稿論文の内部審査が終了し、投稿の最終段階にある。鉛-鉛 5.02 TeV における荷電ジェット測定では、高統計のデータを加えた新しい暫定結果を公表した。ジェット-ハドロン相関測定では、ジェットの周りに発生するハドロンの方位角分布を測定したところ、通過距離が長い方が、ハドロンの方位角分布が広がっていることが分かった。またダイジェットの解析、光子トリガーデータを用いた重クォーク電子収量の測定を行った。中條は、ALICEのジェット物理部会のコンビナー(代表)として活動し、定例部会の招集、解析取りまとめ、結果の承認、論文作成、講演者選定などを行った。検出器の運用については、我々が開発した電磁カロリメータ検出器 (EMCal/ DCal) の Level 1 トリガーシステムが順調に稼働し、2018 年の pp 13 TeV, 鉛・鉛衝突 5.02 TeV におけるデータ取得に成功し、LHC Run-2 での稼働を無事終了した。
超前方光子検出器 (FoCal) の開発においては、CERN 研究所のPS, SPS, LHC 加速器を用いて、新しく建設したFoCal試作機 (mini-FoCal) の性能評価実験を進めた。その後の解析から、mini-FoCal は所定の性能を有していることが分かった。中條は ALICE の技術部会にてmini-FoCal のALICEへの試験導入と、LHC陽子・陽子 13 TeV 衝突データの取得を提案し、ALICE 技術部会から正式に承認された。その後、mini-FoCal のLHC 衝突データの取得に成功し、本プロジェクトは新たな段階へと進んだ。3月には ALICE実験代表、物理部会長を含む国内外の招待講演者を招き、国際ワークショップを開催し、活発な議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ジェット物理の解析では、データ解析が順調に進んでおり、現在4本の投稿論文が予定されている。うち1本は投稿の最終段階にある。中條は ALICE 実験でのジェット物理コンビナー(代表)を務め、ジェット物理を牽引し、最新の結果を審査、公表している。我々が開発した既存の電磁カロリメータ検出器群も順調に稼働し、LHC 第二稼働期におけるデータ収集を無事終えた。前方光子検出器プロジェクトにおいては、新しく我々が製作した mini-FoCal が所定の性能を有していることが確かめられた。ALICE 実験において mini-FoCal の試験導入が認められ、ALICE FoCal プロジェクトは、実際の導入、物理測定に向けて大きく前進した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画は、大きく2つの柱からなる。① 日本オリジナルのダイジェット検出器(EMCal/DCa)と、中央精密光子検出器(PHOS)を駆使し、LHC第2稼働期で日本チームによるジェット・光子・ハドロンを測定から、高温クォーク完全流体の物理を導出。② 日本チームが先導して進めてきた前方光子検出器を新規に建設、その一部設置し、物理測定を行い、グルーオン飽和現象の初期物理を導出。平成31年度の計画は、以下の通りである。
(1)鉛-鉛 sqrt(s_NN) = 5.02 TeV における荷電ジェットのデータ解析の結果と、ジェットの方位角異方性の測定結果を投稿論文にまとめる。また、光子トリガーデータを用いた重クォーク電子収量の測定結果を投稿論文として2本まとめる。2018年に取られた鉛・鉛衝突データを使い、ジェットの横運動量分布の測定、ジェット-ハドロン相関測定、ダイジェット測定を進め、暫定結果を導出、公表する。
(2)FoCal プロジェクトの ALICE 実験への導入に向けて、LoI (Letter of Interest) を提出し、ALICE での認証を得る。また技術デザイン策定書の2019年内完成を目指し、実証試験を進める。具体的には、1) 候補となる読み出し ASIC を複数試し、それぞれの性能を評価、2) マイクロケーブルを使ったシグナル読み出しのテスト、3) 大強度レーザーを用いた PAD 検出器の応答の一様性の評価、4) シミュレーションによる最終デザインの決定、を行う。
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