研究課題/領域番号 |
17H01123
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山口 貴之 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10375595)
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研究分担者 |
山口 由高 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 技師 (40415328)
長江 大輔 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 協力研究員 (60455285)
洲嵜 ふみ 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (70779727)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 実験核物理 / 蓄積リング / 多価イオン / RIビーム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、理研RIBFの蓄積リング(稀少RIリング)に以下に述べる大きな2つの改良を加え、多価イオン状態の不安定核の寿命を飛行中に測定できるようにすることである。 一つ目は、広帯域の共鳴ショットキーピックアップである。H30年度は小型で高感度な共鳴ショットキーピックアップのプロトタイプを設計製作した。真空チェンバー内にインストールできるよう、また、信号強度に効くシャントインピーダンスを最適化するよう設計した。オフライン試験の結果、従来のショットキーピックアップの10倍の信号強度が期待できる。併用することで、広範囲な周波数領域をカバーすることができる。さらにショットキーピックアップで粒子の周回周波数を探す際の補助検出器として、薄膜と2次電子を利用した飛行時間検出器を開発した。H30年度はプラスチックシンチレーターとMPPCの組み合わせだけではなく、高速な光電子増倍管H2431を用いて、時間分解能の向上を試みた。その結果、周期約400nsに対して0.6nsの精度で周波数測定できることがわかった。 二つ目は、蓄積リング内にファイバーシンチレーション検出器を設置することである。H30年度は2mのファイバーシンチレータを複数本利用した蓄積リング内の位置検出器を開発した。ビーム試験の結果、約1cmの位置分解能を得た。また、寿命測定ではセパレータ上流で単一粒子を選別する必要があるため、オンラインで電荷選別できる高速なエネルギー損失検出器を開発した。崩壊時間の速い無機シンチレーター(YAP(Ce), BaF2, CsI(Pure))の特性を調べた結果、CsI(Pure)について1.5%のエネルギー分解能を得た。実用になりそうである。また、チェレンコフ検出器の発光量もビームの電荷と相関があるため、屈折率の大きなTiO2をビーム試験し3%の分解能を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
装置開発のメインとなる大型(~60m)のファイバーシンチレーション検出器のプロトタイプが完成、ビーム試験の結果、位置分解能1cmという良好な結果を得た。また共鳴ショットキーピックアップも完成し、従来のものより10倍の信号強度改善が期待できる。さらにH30年度は稀少RIリングで不安定核の質量測定を2回行った。目下解析中であるが、74, 76Ni, 125Ag, 123, 124Pd, 122Rhについて新しい質量値が得られる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
装置開発を完了させ、テスト実験を行う予定である。内容はファイバーシンチレーション検出器と共鳴ショットキーピックアップを組み合わせた多価イオン状態の不安定核の寿命測定の試験である。並行して課題採択委員会へ申請する実験プロポーザルを検討する。
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