研究課題/領域番号 |
17H01126
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
窪 秀利 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40300868)
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研究分担者 |
中森 健之 山形大学, 理学部, 教授 (30531876)
片桐 秀明 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50402764)
齋藤 隆之 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (60713419)
櫛田 淳子 東海大学, 理学部, 教授 (80366020)
Mazin Daniel 東京大学, 宇宙線研究所, 特任准教授 (90747990)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 宇宙ガンマ線 / 大気チェレンコフ望遠鏡 / ガンマ線バースト / 活動銀河核 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、次世代ガンマ線天文台であるチェレンコフ望遠鏡大規模アレイ計画Cherenkov Telescope Array (CTA)の口径23m望遠鏡LSTの4台アレイの建設を完了し、現行のガンマ線望遠鏡MAGICと合わせた観測により、高エネルギー天体の放射・粒子加速機構や宇宙線起源の解明および暗黒物質対消滅γ線探索を行うことである。本年度、以下の成果を得た。 1、LST望遠鏡用の、光電子増倍管(PMT)と波形GHzサンプリング回路からなる光検出モジュールの製作・調整を行った。(1)スペイン・ラパルマ島に建設された望遠鏡初号機の焦点面に取り付けられた、このモジュール265台(1855素子)からなるカメラに対して、主鏡中央部に設置された較正用レーザーを用いて、測定電荷量の均一化(PMT増幅率の調整)やタイミング調整を行った。(2)建設予定のLST望遠鏡2-4号機に搭載する、同モジュールの組立および品質管理試験を昨年度に引き続き行った。 2、MAGIC望遠鏡によるTeV領域γ線観測のデータを解析した。(1)ガンマ線バースト190114Cのアラート受信後27秒でMAGICによる追尾を開始し、ガンマ線バーストからのTeVガンマ線を高有意度で観測することに史上初めて成功した。MAGIC単独の結果により、TeV領域ガンマ線は、シンクロトロン放射とは別の放射過程であることが判明し、さらに、電波からガンマ線までの多波長の観測結果から、高エネルギーガンマ線は、シンクロトロン自己コンプトン散乱であることが判明した。(2)電波銀河M87を2012-2015年に、MAGICを含めた多波長で観測したところ、低光度状態にあり、多波長放射は、電子シンクロトロン・コンプトン散乱モデル、または陽子と電子による放射モデルのどちらでも説明可能であるが、後者の方が、ガンマ線観測値との合致度が高いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代大気チェレンコフγ線望遠鏡であるCTA口径23m望遠鏡LSTのカメラを構成する、光電子増倍管1855本と本研究で開発した波形GHzサンプリング回路からなるモジュールは、昨年度に望遠鏡焦点面に取り付けられ、2019年11月に、ガンマ線標準光源である、かに星雲からのガンマ線信号を検出することに成功した。さらに、2-4号機分のモジュールの製作・品質管理試験が進行中であり、本研究の目的である、望遠鏡4台アレイの建設がおおむね順調に進んでいる。また、MAGIC望遠鏡により、ガンマ線バーストからのTeVガンマ線を高有意度で観測することに史上初めて成功した。ガンマ線バーストの放射・粒子加速機構および銀河系外宇宙線の起源の解明に対して顕著な進展があり、本研究のもう一つの目的である、高エネルギー天体の放射機構・粒子加速機構や宇宙線起源の解明も、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次世代ガンマ線天文台計画CTAの口径23m望遠鏡LST 4台の焦点面に搭載するカメラの製作・調整を今後も続け、完成したLST初号機を用いて、ガンマ線標準光源による性能評価観測および他天体の科学観測を進め、並行して、望遠鏡2-4号機のカメラを製作し、LST望遠鏡4台アレイの建設を完了させる。また、現行MAGIC望遠鏡と順次稼働開始するLST望遠鏡アレイの両方を用いて、活動銀河核や超新星残骸、パルサー星雲、ガンマ線バーストなどを観測し、高エネルギー天体の放射機構・粒子加速機構および宇宙線起源の解明を目指すとともに、高エネルギーニュートリノや重力波観測のフォローアップ観測を行い、マルチメッセンジャー天文学を推進し、対応天体の究明を目指す。また、矮小楕円体銀河や銀河中心領域を観測し、暗黒物質対消滅ガンマ線の探索を行う。
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