研究課題
J-PARC MLF D2エリアにおいて、先行研究で開発した飛跡検出器と読出回路一式からなるシステムの総合動作試験を行った。D2エリアが狭いため小型の電磁石を使用したが、電磁石以外の装置(飛跡検出器、読出し回路、データ収集装置、磁石電源など)は全てμ-e転換電子測定用に開発調達したものである。システムは全く問題なく動作し、中間運動量領域(50~70 MeV/c)における Decay-in-Orbit(DIO)のスペクトルをC, Si, SiCの標的に対して収集することができた。収集された飛跡検出器からの信号波形データに対して、雑音低減処理を行ってから電子の位置を再構成する解析プログラムを開発した。さらにこれらの電子位置から運動量を再構成するプログラムも開発し、モンテカルロ計算と無矛盾な運動量スペクトルを得た。現在詳細な系統誤差の評価を行なっているが、Czarneckiらによって計算された炭素ミュオン原子からのDIO電子スペクトルと無矛盾な結果を得ている。この時のデータから飛跡検出器の検出効率に時間依存性があることが判明したため、読出し回路の改造とガス構成の最適化を行なった。京都大学複合原子力科学研究所の電子ライナックで試験を行い、時間依存性のないフラットな検出効率(98%)を達成していることを確認した。μ-e転換過程を探索するために必要なビームラインの建設に資するため、ビームライン電磁石の動作試験を行なった。また、ビームライン電磁石の設置作業を行なった。真空ダクト系などが未完成のため本年度中にビームラインコミッショニングにいたることはできなかったが、効率的なコミッショニングに備えてビーム位置分布を測定する装置の開発を行った。ビーム位置分布測定装置の動作試験を行い、良好な結果を得た。
3: やや遅れている
物理測定に使用する検出器システムの開発と性能確認は完了した。当初確認された検出効率の時間に依存する低下も、読出し回路の改造とガスの最適化により解決した。既存のビームラインを活用して中間運動量領域(50~70 MeV/c)に置けるDIOスペクトルの測定を行った。物理測定に使用するビームラインの完成が遅れているため、μ-e転換過程の探索測定には着手できていない。ビームライン建設に参加するなど、施設側と協力しながら物理測定の早期実現に向けて全力を尽くしている。
ビームラインの早期完成をはかるため、施設側と協力しながらビームライン建設などに積極的に参加してゆく。ビームライン完成後のコミッショニングを効率的に行うために必要な装置の開発を行う。ビームライン建設と同時に、放射線測定器のさらなる安定動作と高性能化を目指した開発研究も推進する。μ-e転換過程の探索測定で収集する物理データの高品質化を目指して、電子スペクトロメータの校正方法の確立と、それに必要な装置の開発を行う。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
Proceedings of Science
巻: 294 ページ: 034
10.22323/1.294.0034
Hyperfine Intractions
巻: 238 ページ: 3
10.1007/s10751-016-1367-5
Hyperfine Interactions
巻: 238 ページ: 1
10.1007/s10751-016-1375-5