研究課題/領域番号 |
17H01132
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
平山 賀一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (30391733)
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研究分担者 |
宮武 宇也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50190799)
渡邉 裕 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50353363)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 元素合成 / レーザー共鳴イオン化 / 質量測定 / 国際情報交換 / ベルギー |
研究実績の概要 |
金、ウラン等の重元素を合成する速い中性子捕獲過程の起源となる天体環境の解明を目指し、中性子魔法数N=126近傍核の精密核分光を展開している。オフライン試験で調べたWとTaのレーザーイオン化様式の探索結果を、投稿論文としてまとめて雑誌Review of Scientific Instrumentsで発表した。2019年7月にイギリス・グラスゴーで開催された国際会議INPC2019にて、196-198Irのガスセル内レーザー核分光の結果、KISSで行った詳細なベータ遅発ガンマ線核分光および高効率かつ低バックグラウンドな3次元位置感応型比例係数管、の2件について発表した。 KISSで生成分離した短寿命核194,196Osのアルゴンガスセル内レーザーイオン化核分光法で同位体シフト、荷電半径を測定した。この実験ではKISSに導入した原子核質量測定装置MRTOFで初めて精密質量測定できた。同時に崩壊放射線測定が困難な比較的長寿命の194OsをMRTOFで同定することでレーザー核分光を行えた。更に、186,187Ta, 192mOs, 192Reの精密ベータ・ガンマ分光も実施した。 開発項目1:ガスジェット内精密レーザー核分光装置の開発。色素増幅器のポンプレーザーであるYAGレーザーの色素増幅器への光路長を最適化することで、色素増幅器に出力レーザーに現れる擬信号を低減することができた。これによりレーザー核分光時の応答関数をシンプルにすることに成功し、高分解能化に成功した。 開発項目2:オンライン実験で生成した不安定核199Pt, 196Irを使って3次元位置感応型比例計数管によるベータ線検出効率およびバックグランドレートを測定し、これまでよりもS/N比を3倍程度向上できた。 開発項目3:原子核質量測定装置MR-TOF-MSへ短寿命核ビームを輸送し、オンライン実験にて精密質量測定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、KISSで生成分離した短寿命核194,196Osのアルゴンガスセル内レーザーイオン化核分光法で同位体シフト、荷電半径を測定した。この実験ではKISSに導入した原子核質量測定装置MRTOFで初めて精密質量測定できたと同時に、崩壊放射線測定が困難な比較的長寿命の194OsをMRTOFで同定することでレーザー核分光を行えた。更に、KISS装置で生成分離した短寿命核186,187Ta, 192mOs, 192Reの精密ベータ・ガンマ分光も実施した。このように未知中性子過剰核の多角的な核分光測定が着々と進んでいる。 更に精密なレーザー核分光を行うために、ガスジェット内精密レーザー核分光用の色素増幅器出力の高分解能化を行った。色素増幅器のポンプレーザーであるYAGレーザーはシングルモードではなくマルチモードであるため、増幅器出力の周波数成分にはどうしも擬信号が混じってしまう。この擬信号を低減し、レーザー核分光の応答関数を単純化することで分解能をあげるために、YAGレーザーの色素増幅器への光路長を最適化し、擬信号同士が打ち消し合う条件を実験的に見いだした。指向性の良いガスジェットを生成するための、最適な環境圧力が30Paであうことを見いだした。今年度は、オンライン試験として、不安定核199Ptの精密レーザー核分光を行う予定である。 希少反応生成物のベータ崩壊寿命測定に不可欠な低バックグランドレートのベータ線検出器として、3次元位置感応型比例計数管を開発した。オンライン実験で短寿命核199Pt, 196Irを使って3次元位置感応型比例計数管によるベータ線検出効率およびバックグランドレートを測定し、これまでよりもS/N比を3倍程度向上できた。 未知中性子過剰核の多角的な核分光測定に向けて開発も着々と進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ガスジェット内精密レーザー核分光による電磁モーメントと荷電半径測定を行い、系統的かつ多角的に核構造研究を展開する。今年度も引き続き、オフライン試験で白金の安定同位体を使って、最適なレーザー輸送経路の確立、ガスジェットの形状、イオン化分光法の条件を確定させる。その後、加速器実験で生成した不安定核199Ptの高分解能レーザーイオン化核分光を実施、電気四重極モーメントを測定する予定である。 今年度は昨年度導入した多重反射型飛行時間質量測定器MRTOFの全系での測定効率を向上させて、より生成量の少ない希少反応生成物の精密質量測定を行えるようにする。そのためにKISSビームのMRTOFへの輸送効率改善をオフライン試験で行う。 上記の開発により、今年度は未知中性子過剰核Pt同位体のレーザーイオン化核分光、寿命、質量測定を行う。
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