研究課題
本研究の目的は、国際共同研究計画GAPS(General Anti-Particle Spectrometer)を実現し、宇宙線反粒子の高感度観測によるダークマター探索を推進することである。ダークマターの解明は現在の宇宙物理学の最大の課題の一つである。未発見の宇宙線反粒子である反重陽子は、超対称性粒子ニュートラリーノなどのダークマター有力候補モデルを起源として存在する可能性があり、しかも低エネルギー領域にて二次起源の影響を殆ど受けずに単独で観測できる可能性がある。GAPSは、その反重陽子をかつてない高感度で探索・観測することを計画している。これによりGAPSは、ダークマターの多角的な研究において他実験とは相補的かつ独自の一翼を担うことができる。平成30年度は、前年度の研究成果を踏まえ、南極周回気球飛翔観測に向けたGAPS測定器の開発を進めた。GAPS測定器の中核を担うSi(Li)型半導体検出器に関しては、前年度に開発した良質なシリコン材を用いて、良質(低リーク電流・高エネルギー分解能)かつ量産可能な検出器製造方法の開発を完了し、Si(Li)検出器の実機製作に着手した。TOFカウンタシステムに関しては光検出器の較正装置を構築した。また、Si(Li)検出器の冷却のため、OHP(自励振動ヒートパイプ)という先進的な熱工学技術を独自に発展させた冷却システムの開発を進めた。実機を模した複雑な配管設計の実寸大モデルを構築し、期待通りの性能を得られることを環境試験により確認した。冷却システムの要素技術試験として放熱板が気球の実飛翔環境下で期待通りに輻射排熱することも実証した。このほか、GEANT4シミュレーションコードの開発を進め、測定器全体や各サブシステムの詳細設計検討を進めた。得られた成果は学会や学術論文で順次発表している。
2: おおむね順調に進展している
宇宙線反粒子の高感度探索に向けたGAPS測定器の開発を計画どおりに進め、Si(Li)検出器、冷却システム、その他サブシステム、のいずれにおいても開発成果を挙げたほか、計画どおりにSi(Li)検出器の実機製作に着手した。GEANTシミュレーションコードの開発と、それによる設計最適化も進めている。
平成30年度の研究成果を踏まえ、GAPS実験実施に向けた研究開発を引き続き推進する。当初計画どおり、観測実現に向けて、GAPS測定器各構成要素の詳細設計や最適化、ならびに、実機の量産製作を進めたい。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 905 ページ: 12~21
10.1016/j.nima.2018.07.024
Applied Thermal Engineering
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10.1016/j.applthermaleng.2018.05.116
http://gaps.isas.jaxa.jp/