研究課題
本研究の最終目的は、国際共同研究計画GAPS(General Anti-Particle Spectrometer)を実現し、宇宙線反粒子の高感度観測によるダークマター探索を推進することである。ダークマターの解明は現在の宇宙物理学の最重要課題の一つである。未発見の宇宙線反粒子である反重陽子は、超対称性粒子ニュートラリーノなどのダークマター有力候補の対消滅などを起源として存在する可能性があり、しかも低エネルギー領域にて二次起源成分(既知の物理学起源)の影響を殆ど受けずに単独で観測できる可能性がある。GAPSは、その反重陽子をかつてない高感度で探索・観測することを計画している。これによりGAPSは、ダークマターの多角的な研究において他実験とは相補的かつ独自の一翼を担うことができる。2019年度は、それまでの研究成果を踏まえ、南極周回気球飛翔観測に向けたGAPS測定器の開発を進めた。GAPS測定器の中核を担うリチウムドリフト型シリコン(Si(Li))検出器に関しては、前年度までに確立した製造法を適用して実機の量産製作を推し進め、計画通りの製作を達成したほか、長期安定性などの基本特性を評価確認した。また、GEANTなどを用いた数値シミュレーションコードの開発も進め、測定器全体や各サブシステムの詳細設計の最適化やデータ解析アルゴリズムの構築検討を進めた。Si(Li)検出器の冷却のためにOHP(自励振動ヒートパイプ)という先進的な熱工学技術を独自に発展させて開発している冷却システムに関しては、実機サイズモデルを用いた実用的なシステム開発を進めた。米国にて実施予定の冷却システム試験が米国側の器材に予期せず発生したトラブルに伴い遅延したことで、日本側の関連器材調達などを2020年度に繰り越したが、2020年度に完了した。得られた成果は学会や学術論文で順次発表している。
3: やや遅れている
Si(Li)検出器の冷却のため進めている冷却システム開発のうち、米国にて実施予定の試験が米国側の器材に予期せず発生したトラブルに伴い遅延したことで、日本側の関連器材調達も遅延した。ただし、2020年度に繰り越したうえで2020年度に完了している。そのほかの研究計画に関しては、Si(Li)検出器の実機の量産製作、GEANTシミュレーションコード開発、冷却システムの実用的試験などを計画通りに2019年度内に実施完了するという成果を挙げている。
2019年度までの研究成果を踏まえ、GAPS実験実施に向けた研究開発を引き続き推進する。観測実現に向けて、GAPS測定器各構成要素の詳細設計や最適化、ならびに、実機の開発製作を進めたい。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件) 備考 (1件)
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