研究課題/領域番号 |
17H01137
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
守友 浩 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00283466)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エネルギー物質 / 局所構造 / 放射光X線 |
研究実績の概要 |
1.ペロブスカイト型酸化物の遷移金属サイト(ホスト)を他の遷移金属(ゲスト)に置換し、ホスト周りの局所構造とゲスト周りの局所構造を系統的に調べた。局所構造は、放射光X線を活用したEXAFS構造解析で決定した。ゲスト周りの局所構造の変化は、理想的な値より小さいことが分かった。この経験則は、部分置換による物質設計に指針を与える。原著論文で報告。 2.プルシャンブルー類似体の遷移金属サイト(ホスト)を他の遷移金属(ゲスト)に置換し、ホスト周りの局所構造とゲスト周りの局所構造を系統的に調べた。局所構造は、放射光X線を活用したEXAFS構造解析で決定した。ゲスト周りの局所構造の変化は、理想的な値に近いことが分かった。この結果は、ペロブスカイト型酸化物の結果と対照的である。原著論文で報告。 3.Na濃度を制御したコバルトプルシャンブルー類似体のCo2+周りの局所構造とCo3+周りの局所構造を調べた。試料は、(a)Co2+のみの化合物、(b)Co3+のみの化合物、(c)Co2+とCo3+が共存した化合物、の三つである。局所構造は、X線非弾性散乱を用いて詳細に調べた。この実験手法を用いることにより、同一試料内の遷移金属の2価状態と3価状態を区別できる。(c)Co2+とCo3+が共存した化合物においても、Co2+とCo3+の局所構造は、それぞれ、(a)Co2+のみの化合物の局所構造と(b)Co3+のみの化合物の局所構造、に近いことが分かった。原著論文で報告。 4.二次電池の電位の温度依存性を利用して、室温付近の温度変化を電力に変化する素子(「三次電池」と呼ぶ)を提案し、ビーカーセルで試作した。295Kと323Kの温度サイクルで、熱効率1%を得た。この値は、カルノー効率の11%に匹敵する。原著論文で報告。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた、(a)元素置換によるペロブスカイト型酸化物の局所構造の研究、(b)元素置換によるプルシャンブルー類似体の局所構造の研究、(c)Na濃度を制御したプルシャンブルー類似体の局所構造の研究、順調に進展した。それぞれ、原著論文で報告している。さらに、予定にない「三次電池」を考案・作成した。この結果も、原書論文で報告している。
他方、計画通りに進まない部分も明らかになった。
予備実験として、層状遷移金属酸化物において、遷移金属L端のスペクトルを測定した。遷移金属の2価状態と3価状態では、スペクトル位置・形状の大きな違いは観測されなかった。この結果より、X線非弾性散乱を活用しても、層状遷移金属酸化物において、同一試料内の遷移金属の2価と3価を電子状態を解明できないことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
X線非弾性散乱法を活用することにより、コバルトプルシャンブルー類似体において、同一試料内の遷移金属の2価と3価の電子状態を明らかにすることができた。それと同時に、この実験手法を層状酸化物には適用できないことも分かった。今後は、X線吸収分光と第一原理計算を組み合わせることにより、イオン注入による電子状態の変化を明らかにしたい。
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