研究課題/領域番号 |
17H01141
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
為ケ井 強 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30183073)
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研究分担者 |
岡安 悟 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50354824)
一瀬 中 一般財団法人電力中央研究所, 電力技術研究所, 上席研究員 (70371284)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 鉄系超伝導体 / 粒子線照射効果 / 臨界電流密度 / 超伝導ギャップ構造 |
研究実績の概要 |
鉄系超伝導体を主な対象として、プロトンや重イオン等の高エネルギー粒子線照射により生成される欠陥を用いて、基礎面では超伝導発現機構に関連する超伝導ギャップ構造の解明を、応用面では臨界電流密度の増強を目指して研究を行い、以下の成果を得た。 1、6 MeVのプロトンをBaFe2(As,P)2に照射することにより欠陥を導入し、臨界電流密度(Jc)を低温でも5倍程度増大させるることに成功した。また、磁気装飾法を用いて磁束のピン止めに直結する磁束分布の実空間観察を行い、ピン止め力の評価を行った。2、スプレー状に柱状欠陥を導入することにより鉄系超伝導体、銅酸化物高温超伝導体等では、Jcのブロードな増大が観測される(異常ピーク効果)。(Ba,K)Fe2As2における異常ピーク効果を様々な角度および密度で柱状欠陥を導入することにより調べ、欠陥構造の非対称性が異常ピーク効果を弱めることを明らかにした。3、強磁性超伝導体の中でも最大の超伝導転移温度を持つEuFe2(As,P)2におけるプロトン照射効果を詳細に調べた。4、複雑な層状構造を持つ鉄系超伝導体であるKCa2Fe4As4F2単結晶におけるJc特性および照射効果の詳細な測定を行った。5、従来型超伝導体であるNbSe2における超伝導臨界温度およびJcに対する重イオン粒子線照射効果の詳細な評価を行った。6、特異な層状欠陥を持つことが知られているCaKFe4As4単結晶において、高分解能電子顕微鏡観察を行い。層状欠陥構造の解明に成功した。7、(Ba,K)Fe2As2単結晶における低磁場での磁束格子融解的磁気応答を確認した。8、Fe1+yTe1-xSexにおいて、超伝導状態を保つことのできる最大の電流密度である対破壊電流を、収束イオンビーム加工を適用することによりブリッジ構造を作製し、評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BaFe2(As,P)2において粒子線照射によるJcの増大に加え、磁束ピン止めに直結する磁束分布の直接的可視化に成功した。また、強磁性超伝導であるEuFe2(As,P)2の超伝導および強磁性状態に対する欠陥導入効果を初めて詳細に検討することに成功した。加えて、超伝導面に平行に磁場を印加したときに特異な臨界電流特性を示すCaKFe4As4における層状欠陥の詳細を高分解能電子顕微鏡観察により明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
1、柱状欠陥導入によるJcの増大を鉄系超伝導体・NbSe2だけでなく、1990年代に精力的に調べられた銅酸化物高温超伝導体と詳細な比較を行う。 2、鉄系超伝導体の10 m以上の丸型線材を作製し、超伝導コイルを構成し磁場発生を試みる。同時に、Jcのさらなる向上を目指す。 3、重イオン照射したNbSe2におけるピーク効果と導入した欠陥配置の関係を明らかにする。 4、平板状の鉄系超伝導体において磁束・反磁束境界の不安定生の磁気光学イメージングを行い、不安定性のダイナミクスの詳細を調査するとともに、マクロな磁化緩和との関係を明らかにする。
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