研究課題
2019年6月に約2週間、国立天文台ハワイ観測所岡山分室(以下、岡山観測所)の188cm望遠鏡に設置したドップラー振動撮像装置を用いて木星の観測を実施した。今年度は3地点同時観測を予定していたが、フランスの Calern Observatory に設置した撮像装置の不良のため、アメリカの Dunn Solar Observatory と岡山観測所の2地点で同日観測を実行した。日本は梅雨時期であったが8夜にわたって観測ができた。岡山観測所188cmの口径の大きさのために、1夜分のデータでも大赤斑の回転流や赤道付近のジェットを分解できることが示された。時折かかった薄雲のために完全に連続したデータは取得できなかったものの、観測データの解析および次年度の観測の準備のために重要なデータを取得できた。一方、木星形成理論に関しては、従来のその場形成という前提を外し、惑星の大移動時の微惑星獲得過程を検討した。その研究を通して、移動する惑星は限られた領域の微惑星しか捕獲することができないことがわかった (Shibata et al. 2020)。これは、木星エンベロープに含まれる重元素の相対存在度を理解する上で重要な知見となる。また、昨年度に開発したガス降着流における輻射流体モデルを、最近検出された若い巨大ガス惑星 PDS 70b の水素バルマー線放射に適用し、輝線強度および輝線幅が理論的に説明可能であること、また、ガス降着率や降着流構造に制約を与えることができた (Aoyama and Ikoma 2019)。
3: やや遅れている
岡山観測所188cm望遠鏡とドップラー振動撮像装置のインタフェース部分の問題解決のために生じた、昨年度までの遅れがそのまま今年度の遅れにつながっている。昨年度行う予定だった岡山観測所での連続木星観測を今年度行った。
本年度、不慮の装置不良のため3地点同日観測ができなかったことと、データの途切れのために大気および内部構造推定が可能な十分な質の連続データにならなかっため、当初は予定していなかったが、来年度6月下旬から7月上旬に木星観測を行う予定である。そのデータをもとに、木星の大気および内部の状態の新たな理解を目指す。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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