研究課題
理論・力学モデル班、データ解析班、現業的応用実験班、からなる3班の研究体制を構築し、各班が密接に連携をして、階層的数値モデル群を駆使した系統的実験、得られたデータを基にした理論構築、および新理論に基づく観測解析データ・モデル出力データの解析を行った。熱帯域における湿潤対流を駆動源とした成層圏-対流圏結合変動について、現象の記述と力学過程の理解から最先端モデルによる将来予測までの総合的研究を推進している。各班の平成29年度の研究実績の概要は以下の通りである:(1)理論・力学モデル班: 鉛直・水平2次元の領域気象モデルにおいて自励的に生じた成層圏の準二年周期振動(QBO)的変動が対流圏の積雲対流にどのような影響を及ぼすのかを調べ、QBOの位相によって、大気下層で水平風の鉛直シアが強い位相では積雲対流が強化され、雲層上端付近で風速シアが強い位相では積雲対流が弱化されることを明らかにした。(2)データ解析班: 衛星データを用いて、成層圏突然昇温生起前後の下部熱圏領域までの全球的子午面循環の変動特性について解析した。気象庁長期再解析JRA-55ファミリーデータや多数の気候モデルにおける成層圏突然昇温の発現頻度等を調査した。JRA-55、対流雲活動衛星観測データを用いて、熱帯下部成層圏の循環場の変動が熱帯の積雲対流活動に与える影響を調べた。また、JRA-55、ERA-Interim、MERRA、MERRA2の再解析データ間の赤道域力学場の比較を行った。(3)現業的応用実験班: 気象研究所地球システムモデルの改良を行い、鉛直解像度の向上、非地形性重力波のパラメータリゼーションの実装等により、熱帯成層圏におけるQBOの振幅や周期をある程度再現できるようになった。そのモデルによるQBO相互比較実験(QBOi)と関連する追加実験の結果を用いて、QBOの再現性や力学的特徴を調べた。
2: おおむね順調に進展している
研究体制構築は順調に進んでいる。5月の日本気象学会春季大会、日本地球惑星科学連合2017年大会等で、関連研究者が集合し、各班の研究手法の確認なども含めて情報共有を行った。2017年10月9~14日、京都大学益川ホールにおいて Joint SPARC Dynamics & Observations Workshop を開催し、本研究分担者・協力者のほとんどが参加して、最新研究成果の発表、および共同研究の打合せ等を行った。Joint Workshop の柱の一つが、当研究代表者が主導する SATIO-TCS (Stratospheric And Tropospheric Influences On Tropical Convective Systems) であり、当該研究の国際共同研究展開開始時の関係研究者間の研究連携打合せを行った。これらの概要は、EOS No.99 (2018) https://doi.org/10.1029/2018EO097387に報告済みである。
今後引き続いて、短期間の成層圏突然昇温から、QBO、成層圏寒冷化までの成層圏変動ごとに、熱帯域における湿潤対流駆動の多階層な連結変動への下方影響を評価し、予測改善インパクト実験を行う。また、課題ごとにデータ解析と数値実験を並行して実施する。(1)理論・力学モデル班: 熱帯域湿潤対流の多階層連結変動理論構築を目指して、領域気象モデルによる積雲対流と背景風の相互作用に関するパラメタースウィープ数値実験を行う。また、大気循環力学モデルの高速化のための数値ライブラリの開発を行う。(2)データ解析班: データ整備・更新を継続するとともに、成層圏大規模突然昇温現象生起時の大気波動及び子午面循環の変動に注目して、下部熱圏高度までの熱帯域を中心に詳細な解析を行い、過去の事例との比較を行う。(3)現業的応用実験班: 現実的なQBOを再現できる気象研地球システムモデルおよび領域非静力学モデルを用いて、成層圏から対流圏への下方影響を評価するための数値実験を系統的に実施する。また、国内の定期的研究集会では、研究参画者ができる限り集合して、進捗状況の確認と情報交換を行うとともに、国内外の関連研究集会に積極的に参加して、最新成果を発表し研究交流を行う。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 5件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (49件) (うち国際学会 38件、 招待講演 13件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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