研究実績の概要 |
初年度は、5月31日課題辞退時までに、まず地上観測用の3波長(355nm, 532nm,1064nm)の減衰後方散乱係数、2波長(355nm, 532nm)の消散係数と同じ2つの波長での偏光解消度を可能とする多波長高スペクトル分解ライダの開発を進めた。まず波長532nmは高スペクトル分解ライダで、波長355nmはラマンライダによって、多波長高スペクトル分解ライダと同等のものの観測データ解析を行った。ラマンの制約から夜間だけの多波長消散係数の実現となる。まず消散係数と後方散乱係数の比をライダー比というが、氷粒子についてライダー比と偏光解消度の関係を解析した。波長532nmではライダーは10から20程度の値を、偏光解消度は50%程度の値を示していた。また532nmの方がライダー比と偏光解消度ともに355nmよりも大きくなるという波長依存性が示唆された。物理光学手法による散乱計算によるDroxtals粒子, 水平面に偏って存在する六角柱粒子、水平面に偏って配向する平板状粒子など様々な形状や配向の氷粒子の後方散乱特性の解析を進めた。観測から得られた値は、理論的に解析された値から説明されることがわかった。水雲に対する衛星搭載ライダや地上で開発されている多視野角多重散乱ライダの理論的解析も進めた。物理モデルに基づく高速なライダの凖解析的多重散乱解析法を開発した。この手法では初めて任意の散乱回数の発生する多重散乱の影響を強く受けた光学的に厚い雲の偏光解消度の計算を実現した。モンテカルロ法による計算よりも3-4桁程度早いことが確認された。モンテカルロ法によってえられた解によってこの手法の妥当性が確認された。
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