研究課題
南極氷床が温暖化に対して敏感であることが明らかになり、温暖化の進行による氷床の融解が引き起こす海面上昇に対する危機感が高まっている。現在、温暖化が進行した場合にどの段階でどのような速度で南極氷床の融解が進行しうるのか?が海面上昇予測における核心的な問いとなっている。現在よりも温暖な気候状態において南極氷床がどのようにふるまいうのかに関する知見は、過去の温暖な時代における詳細な氷床変動を調べることで得ることができる。本研究は、産業革命前よりも全球平均気温にして+1℃温暖で、現在よりも数m海面が上昇していたとされる最終間氷期(13~11.5万年前)に着目し、当時の東南極氷床の変動を百年スケールの時間解像度で明らかにした。最終年度となった今年度は、東南極周辺の海域で掘削された堆積物コア(U1361, GC1407, PC404, PC504)中の鉱物組成とネオジムの同位体比を測定し、最終間氷期における東南極氷床の変動を時空間的に復元した。その結果、東南極のウィルクス海盆において急激な氷床の後退が最終間氷期中に2度起こっていたことが明らかになった。一方でトッテン氷河やアメリー氷棚付近の氷床が著しく後退していることを示す積極的な証拠は得られなかった。得られた南極氷床変動復元結果を当時の海水準変動の復元記録と比較した結果、両者の変動パターンがよく一致していることが明らかになった。これらの結果は東南極氷床の中でもウィルクス海盆地域が特に温暖化に対して敏感であること、当時の数mもの海水準上昇に南極氷床の質量損失が実質的に寄与していた可能性を示唆する重要な成果である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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