研究課題
海洋循環と大気循環の関係性を理解するためには、表層のみの情報ではなく鉛直方向のデータの採取が必要となってくる。とくに時間をさかのぼり、時系列での変動について理解することが必要である。そのために適した手法は、堆積物試料について炭酸カルシウムの骨格をもつ動物プランクトンである有孔虫の殻に保存された化学情報を抽出する必要がある。そのため、ドイツの調査船に乗船し、航海を実施した。とくに太平洋の海洋循環変動に敏感に応答かつ低緯度の海洋環境を保持していると考えられる海域からのサンプル採取を実施することができた。ドイツの観測船を使った航海では、タスマン海やサンゴ海などの中緯度から低緯度にかけての地形情報採取、堆積物、海水などの試料採取を行った。またCTDなどの現場観測により、水温等の物理情報の収集も実施することができた。海水の溶存無機炭素の分析を行うための前処理システムの構築も並行して実施し、実際に海水の分析を行う目処がたった。低緯度の表層海水の循環を示すサンゴ骨格は、年輪を刻むため、高時間分解能での環境復元が可能である。今年度、骨格分析も実施し、黒潮などの変化を明確に捉えていることがわかった。また、放射性炭素の濃度変化により、鉛直混合の強弱についても新しい知見が得られることが確認できた。一方、大気循環の指標として考えられる木材の酸素同位体比の分析結果を使った、10年規模の気候変動の復元手法についても、測器記録と統計学を組み合わせた手法により確立することができた。
2: おおむね順調に進展している
サンプリングを順調に実施することができ、海水分析のための処理方法の確立も行うことができた。
航海で得られた堆積物試料について、過去の古環境を記録している有孔虫の洗い出しと抽出を行う。また、それらの酸素同位体比変動の分析を行うとともに、炭素14年代決定を行い、コアの年代モデルの確立を行う。海洋の水塊変動を捉えていると思われる炭素14であるが、サンゴ骨格試料については、単年ずつでの分析を実施し高解像度での表層海洋循環変動を復元する。タスマン海の海水の分析結果はとくに南大洋起源の海水の影響評価に用いることが可能で、有孔虫分析を行うことでそれらが時間を遡って復元することが可能と考えられるが、実施に先行し、採取した海水の分析により、現在の海洋での分布の描像を復元する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (25件) (うち国際共著 13件、 査読あり 25件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 15件、 招待講演 3件)
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